研究領域 | ハイブリッド量子科学 |
研究課題/領域番号 |
16H01049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田畑 仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00263319)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スピン / 傾斜格子歪 / フォノン / フォトン励起 |
研究実績の概要 |
機能性酸化物の多彩な物性と結晶構造許容性を生かし、スピン・フォノン結合制御とフォトン励起を実現する。スピンと双極子秩序が共存するガーネット型酸化鉄薄膜を対象として、エピタキシャル成長する基板との格子ミスマッチと薄膜厚さとの相関による傾斜格子歪導入により空間反転対称性の破れを実現する。これにより、フォノンソフト化:双極子強結合 (強誘電性)の発現と、傾角スピンと中心対称の破れの相乗効果によるDzyloshinski-Moriya(DM)相関によりスピン・フォノン結合型マグノン(エレクトロマグノン)誘起を目指す。さらにスピン・フォノン結合モードのフォトン励起として、様々なエネルギー帯域のフォトン(電磁波)を照射することで、スピン歳差励起(マイクロ波GHz帯)、マグノン励起(テラヘルツ波THz帯)および電子励起(可視光)に関する実験を実施した。 結晶格子歪を内包する不安定ゆらぎ系においては、これら外部からの摂動に極めて敏感に応答するため、超高感度センシングが期待できる。これまでスピネル型鉄酸化物において、磁性―非磁性イオン相関によるクラスタースピングラスを実現し、このスピンゆらぎを用いて脳型シナプス結合模倣デバイスを作製している(基盤研究(S):H24-H28)。本研究では、ガーネット型鉄酸化物を対象とし、格子定数および積らに野において高度なナノ構造制御技術と量子的な結合制御により先駆的な研究を遂行している班内(フォノン班)および班外の研究者との融合により互いの技術を相互補完することで、Quantum Enabled Technologyを開拓し革新的デバイス開発に繋がる研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スピンと双極子秩序が共存するガーネット型酸化鉄薄膜において、希土類元素を系統的に変化させf電子数および格子定数を変化させた各種の傾斜格子歪薄膜を形成した。この系統的実験により、LuおよびY系ガーネット型鉄酸化物において良好なスピン物性(小さなダンピング特性)を呈することを実証した。これはエピタキシャル成長する基板との格子ミスマッチと薄膜厚さとの相関による傾斜格子歪導入により空間反転対称性の破れを実現できたことを意味する。また詳細な高分解電子顕微鏡観察により数十nmの領域において、1-5%の傾斜格子歪を導入することが可能であることを明らかにした。さらにこの傾斜格子歪領域において分光エリプソメトリ―評価により、光学定数から見積もられる電磁状態が1eV近く変化することを初めて明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまで主として基板と薄膜との格子ミスマッチによる格子歪制御を検討したが、ガーネット結晶の構成元素の部分置換による3次元的な結晶格子歪制御を進める。置換元素のイオン半径、価数、局在スピンの有無により、スピングラス等の特異磁気物性の発現、制御形成が期待できる。 加えて結晶構造の局所的な格子歪をより詳細に観察、解析することにより、フォノンソフト化と双極子強結合との相関や、結晶構造の局所的な非中心対称性(対称性の破れ)が誘起する傾角スピンとの相乗効果によるDzyloshinski-Moriya(DM)相関等を、磁気・光学的手法により解析する。これによりスピン・フォノン結合型マグノン(エレクトロマグノン)誘起を、スピン・フォノン結合モードのフォトン励起を目指す。 さらに当該新学術研究領域の、化合物半導体や炭素系ナノ材料の研究分野において高度なナノ構造制御技術と量子的な結合制御により先駆的な研究を遂行している研究者との融合により互いの技術を相互補完することで、Quantum Enabled Technologyを開拓し革新的デバイスへ開発とつなげる。
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