公募研究
平成28年度は、本研究の基本となる実験系を構築した。すなわち、全ファイバーキャビティQED系を2台独立に構築した。各キャビティQED系は、ナノ光ファイバー共振器と単一トラップセシウム原子を用いた全ファイバーキャビティQED系である。サブ波長の直径(約400 nm)のウェイスト部を持ち、テーパー部を介して単一モード光ファイバーにモノリシックに接続されたナノ光ファイバーが、ファイバーブラッグ格子に挟まれたファブリーペロー型のナノ光ファイバー共振器を超高真空槽内に配置した。セシウム原子のD2線(波長852.3 nm)に対して上下準位の光シフトが同一となる「魔法波長」の青方離調光(波長688 nm)と赤方離調光(波長937 nm)の2色のトラップ光をファイバーに入力することで、ナノ光ファイバー共振器のウェイスト部の側面近傍に定在波型の微小光トラップを形成した。さらに、セシウムディスペンサーを原子源とし、6ビーム式の偏向勾配冷却により数μK程度にまで冷却されたセシウム原子雲を共振器ウェイスト部に重ね合わせることで、単一セシウム原子をトラップした。ファイバーに微弱なプローブ光を入射し、その周波数を掃引して透過スペクトルを測定し、真空ラビ分裂を観測した。すなわち、それぞれのキャビティQED系が強結合領域にあることを確認した。このようにして、ナノ光ファイバー共振器と単一トラップセシウム原子を用いた全ファイバーキャビティQED系を2台独立に構築した。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、全ファイバーキャビティQED系を2台独立に構築し、それぞれが強結合領域にあることを確認した。
構築した2つのキャビティQED系を光ファイバーで直接結合させることで、「全ファイバー連結キャビティQED系」を構築し、周波数領域での結合スペクトルの観測、巨視的距離を隔てたキャビティQED系間の非局所相関や量子状態の伝搬ダイナミクスの観測を目指す。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 56 ページ: 058005
10.7567/JJAP.56.058005
Opt. Express
巻: 24 ページ: 8940-8940
10.1364/OE.24.008940