2012年、強相関準結晶Au-Al-Yb 系において量子臨界性が観測されたことにより、強相関効果と準周期性の両方を取り扱うことが必要とされている。しかしながら、この準周期系に関する研究は、相関の無い系に関する解析が古くからなされているが、強相関効果についてはあまりなされていなかった。
本研究では、準周期系特有の自己相似性に着目し、相関効果によって出現する磁性ついて、ペンローズハバード模型を用いて調べた。無限小の斥力相互作用によりどのような磁化分布が出現するのか調べるため、まず$E=0$の束縛状態がペンローズ格子中でどのように分布しているのか調べた。その結果、"クラスター"構造を形成していることを明らかにした。このクラスターは、31サイトのものから無限の大きさのものまで存在し、それぞれのクラスターにおいて片方の副格子でのみ磁化が現れる。また、クラスターのサイト数、副格子の数等の特性は、準結晶特有の再帰性(インフレーション・デフレーションルール)から厳密に得られ、これを基に熱力学極限における反強磁性の性質を明らかにした。ペンローズ格子は、フラストレーションのないバイパータイト格子であるため、強相関極限においては反強磁性状態が実現することが知られている。本研究では、クラスター構造に由来する弱相関反強磁性状態から、強相関反強磁性状態へのクロスオーバーについてハートレーフォック近似を用いて解析を実行した。ここでは、ペンローズ格子が五次元座標系で記述できることを利用し、磁化の二次元の直交補空間への射影を行い、ペンローズ系特有の磁気構造の変化について明らかにした。
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