研究実績の概要 |
近年、PdTe2やPtX2(X=Se,Te)のΓ-A点の間でType-Ⅱ Dirac coneが存在していることが判明している。本研究では関連物質系のNiTe2単結晶を育成し、磁気抵抗効果の測定と角度分解光電子分光(ARPES)を用いて電子構造の研究を行った。様々なNi/Teの組成比(NixTe2、x=1.1-1.3)の単結晶を育成し磁気抵抗を測定したところ、磁気抵抗の振る舞いには組成依存性があることが判明した。Ni1.72Te2の組成付近でのみ磁気抵抗が巨大化し、低温で磁場に比例した極めて大きな磁気抵抗(7Tで約30%)が観測された。NixTe2中の過剰NiはTe層間にインターカレーションされ、NiTe2層に対して電子を供給していると考えている。このインターカレーションされたNi量の変化に伴い電子ドープ量が変化すると期待される。この電子ドープ量の変化に伴い、Ni1.72Te2の組成近傍でDirac点のエネルギー準位がフェルミ準位に近接し、直流電気伝導に対しDirac電子の影響が現れ、巨大磁気抵抗が観測されたものと考えている。 このNi1.72Te2の組成の試料でARPESの測定を行った結果、フェルミエネルギーEF近傍にDirac点があるtype-Ⅱ Dirac coneのホールバンドを観測した。Dirac点は(0,0,0.37c*)に存在している。Dirac点近傍で、ky方向のバンド分散の測定したところ、 EF近傍で線形バンド分散が観測され、EFでバンドが一点に交わっていることが判明した。また、kz方向のバンド分散を測定したところ、Γ-A点の間のDirac点付近で2本のバンドが交差していること判明した。この結果は、type-Ⅱ Dirac coneがNi1.72Te2にも存在し、そのDirac点がEFに非常に近いエネルギーの存在することを示唆している。
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