これまでに取得した8.2mすばる望遠鏡広視野カメラHyper Suprime-Cam (HSC)の高頻度観測データを再解析し,低質量ブラックホールを持つ活動銀河核(AGN)の候補天体を選出した.これらの天体のブラックホール質量を測定するための分光追観測提案(米国・キットピ ーク天文台Mayall 4m望遠鏡・可視分光器KOSMOS)が採択され,平成29年7月21日から24日までの4晩,観測を行なった.4晩のうち,1.5晩程度が晴天に恵まれ,ターゲット天体を7天体に対して分光観測を行い,スペクトルを取得することができた.いずれも赤方偏移0.2程度以下の近傍天体であることがわかったが,低質量ブラックホールを持つ明確な証拠を得ることはできなかった.また,副産物として,フラットな電波スペクトルを示す銀河も3天体分光し,それらは相対論的ジェットが視線方向を向いたブレーザーと呼ばれる天体とは異なる楕円銀河的な可視スペクトルを持つことがわかった. また,HSCを用いた突発天体探査観測のデータを用いたブラックホール研究として,潮汐破壊現象を検出し,その母銀河の分光観測を実施した.
木曽シュミット望遠鏡を用いたモニター観測による既知の低質量ブラックホール天体の光度変動は,平成28年度の谷口の修士論文執筆の後,より高精度の変動を評価するためデータの再解析を行うとともに,論文執筆の作業を進めている.並行して,これまでに精力的に観測してきた,電波で明るく,相対論的ジェットを持つ活動銀河核のモニター観測の結果を査読論文として発表した.また,活動銀河核中の超新星と類似した突発現象に関する新しい理論モデルを査読論文において提示した.
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