本研究では非一様球対称宇宙モデルを考え,我々はその中心にいるとして,そのような球対称な非一様性を観測からどれくらい制限がつけられるか,非一様性がどの程度の系統誤差を生じさせるかを明らかにすることである. 前年度に与えられた光度距離ー赤方偏移関係から,それを満たすΛLTBモデルを構築し,真の宇宙項の値と光度距離にパラメータとして含まれる見かけの宇宙項の値との差を埋めるためにはどの程度の非一様性が必要かを明らかにすることに成功した. 本年度は,このように構成されたモデルにおいて,宇宙背景放射の角度パワースペクトルを計算する手法を開発し,オープンコードと組み合わせることによって,実際に角度パワースペクトルを計算することができるようになった.具体的には光子の最終散乱面付近では十 分一様等方な状況が実現されているとし,最終散乱面付近における一様等方モデルのパラメータをΛLTBモデルから抽出し,それをオープンコードに入力することによって,仮想的な一様等方宇宙におけるパワースペクトルを得る.その後,最終散乱面までの角径距離の違いに伴う補正を行うことによって,ΛLTBモデルにおける宇宙背景放射のパワースペクトルを計算することができる. このパワースペクトルと観測データを比較し,モンテカルロ解析を行って,モデルパラメータに制限を付け,結果が学術誌に掲載された. また,これらの結果からつけられた制限の範囲内で,クラスターからのCMB光子の散乱についての解析を現在行っており,より強い制限がつくことを示唆する結果を得ている.これについては新学術領域シンポジウムで報告を行った.
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