研究領域 | なぜ宇宙は加速するのか? - 徹底的究明と将来への挑戦 - |
研究課題/領域番号 |
16H01100
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
本間 謙輔 広島大学, 理学研究科, 助教 (40304399)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超高真空 / ディラトン |
研究実績の概要 |
28年度は高温で顕著な原子の吸着効果を有する非蒸着型ゲッター材料を用いた、両端開口迷路型差動排気系の有効性について検討した。レーザー光は鏡によって思い通りの方向へガイドできるのに対して、中性原子は鏡面で乱反射して様々な方向へ向かう。したがって、複数の鏡によりジグザグに伝搬するレーザー光路に沿ってゲッター材を内壁にもつ腸のような中空構造を導入すれば、乱反射した原子が内壁にぶつかる度に吸収確率が増えるため、ジグザクの入口および出口から遠い腸内部に原子がほとんど届かない「影の領域」が作り出せるはずである。28年度はこの効果の検証を考えたが、限られた予算内で迷路の効果を実験的に検証するのは困難であると考え、代替となるシミュレーションを実施した。その結果、衝突1回あたりの吸着効率が十分でない場合、中性原子は短時間で迷路の外に出てしまい、迷路内壁との衝突回数と比べて、迷路外の真空容器内壁との衝突回数の方が桁違いに多くなることが判明した。たとえば、直方体真空容器であれば、特に隅においてホコリが溜まるがごとく実効的な袋小路が作り出せることが見出せた。このことにより、超高真空を作りだすには、超高真空度が必要な微小空間内でのみ吸着させるよりも、むしろ全く逆の発想で、表面積が稼げる大容量の真空容器内の壁全面および特に隅の部分に実効的表面積の大きなゲッターポンプを配するような構造が理想的であることが分かった。並行して、10**-14 Paへ至ることが可能な特殊なゲッター材を組み合わせたイオンポンプの開発者との議論を重ね、近未来の超高真空系が現実的にどのような差動排気構造になるべきか設計指針が定まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自身のシミュレーションによる研究、および、超高真空の専門家との会合を通じて、近未来の超高真空系が現実的にどのような構造になるべきか、設計指針が定まったため。さらに、28年度には究極のディラトン粒子探索へ向けて、国際共同実験SAPPHIRESを代表として立ち上げた。また申請者を介して、SAPPHIRESが近未来に探索を予定する超高強度レーザー施設(ELI-NP)を有するルーマニアのIFIN-HH研究所と広島大学理学研究科が研究協定を締結することに成功した。これらの関連活動を通じて、研究を加速できると見込まれるため。
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今後の研究の推進方策 |
究極の超高真空へ至るには、少なくとも4段階の差動排気系が必要となる。上述のゲッター材料を多用する段階は3段階目に相当し、実験的検証を行うには2段階目までを実装しておく必要がある。29年度は2段階目を実装し、3段階目の効果を実験的に検証したいと考える。同時に、近未来に、超高真空度が達成された場合、宇宙論的に意義のある軽い新粒子をどのように探索していけるのか、超高真空技術の基礎物理学への応用についても検討する。
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備考 |
SAPPHIRES (Search for Axion-like Particles via optical Parametric effects with High Intensity laseRs in Empty Space) collaboration has been formed.
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