宇宙開闢を明らかにする宇宙マイクロ波B-mode偏光観測衛星Lite BIRD計画を念頭に近赤外よりも長波長側で機能するラジエター表面を構成することを目標に本開発を行った。極低温を必要とする科学衛星であり、比較的大面積である検出器面を冷却するため、冷凍機のみならず100K以下のような領域でも3K空間へ輻射熱伝達によって熱放射を行い補助する必要がある。そうした際に、耐放射率の高い表面、低いアウトガスレート、高熱伝導度、低コスト、高放射率を兼ね備えた表面として、多孔質銅を酸化処理した表面の輻射熱伝達率を測定した。測定には極低温環境における平行平板間を輻射熱伝達した熱流量を直接計測するシステムを構築し、本研究において提案した表面が高い放射率を示すことを見出した。この成果については、成果発表した低温工学・超電導学会において優良発表賞を受賞した。 また、低いアウトガスレートであることでその有用性が評価されているニッケルーリンータングステン系の黒色コーティングについても、弱点であった磁性を持つという特徴を失くす開発を進めた。放射率については既存品よりも下がってしまったが磁性を消すことに成功した。磁性ノイズに敏感な素子回りの黒色コーティングとして使用できる黒色コーティングである。表面形状が比較的フラットであり、切削加工においても損壊せず傷がつかない特長を持つ。超伝導ピン止め機構を用いた偏光フィルターの回転器といったアウトガスの低減を要求し、さらに輻射熱伝達は促進させたいが静止時には接触面積を大きくとりたいといった要求を持つ場面にも有用であると考えられる。
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