日本はインフレーション仮説を探索するため、チリ-アタカマ砂漠での地上実験Simons arrayと将来衛星計画LiteBIRDを推進している。この観測が目指している代表的なsingle-field slow-rollインフレーションモデルの探索に必要な観測感度を得るため、ミリ波光学素子表面の無反射加工が提案されている。本研究では、ミリ波光学素子表面に無反射加工を施すための製造手法の確立を目指した。光学素子として使われるアルミナは大変に硬く、微細加工することが困難な材料であり、加工しようとすると多大な時間を要する。そのため、実際に観測に使用される光学素子のサイズでは加工時間とコストの面で非現実的である。その問題を解決するために、加工時間を大幅に短縮し、かつ高精度な微細加工が可能な製造工程及び加熱方法の開発を行った。 本研究では、2段階焼結法を開発した。2段階焼結法とは、先ずはじめに十分に微細加工に耐えうる硬さを持ち、かつ短時間で加工が可能な適度な硬さを有する硬さに仮焼結し、微細加工を施した試料を完全焼結(本焼結)して緻密なアルミナ焼結体とする方法である。これにより加工時間の大幅な短縮が期待できる。昨年度の研究で、1200℃で1時間保持した仮焼結体に切削加工とレーザー加工の2種類で微細加工を施し、形状測定をして加工精度や欠けなどの評価を行った。今年度は、微細加工を行ったアルミナ試料を加工形状を維持した状態で緻密化させるための本焼結条件を検討した。
|