地磁気を生成・維持しているダイナモ作用は外核内の流れによって生じている。核-マントル境界における下降流および内核境界における上昇流の空間的組み合わせは外核内の流れのスケールやパターンを決める。流れのパターンは磁場生成過程に影響するので、地磁気の分布や永年変化にその影響が現れる。つまり、核-マントル結合の時空間変動の情報は、外核内の流れの時空間変動に含まれている。そして、外核内の流れの情報は地磁気データに含まれている。そこで、地磁気モデルを用いて外核内の流れを求める。そして、推定された外核内の流れの空間分布および時間変動から核-マントル結合の時空間変動を明らかにする。 Matsushima (2015) では、コア-マントル境界における粘性境界層下部の流れが地衡流であるという制約が課されていた。前年度、その手法を発展させることにより、つまり、流れが磁気地衡流であるという制約を課すことにより推定方法が改良されたことが確認された。しかしながら、コアの電気伝導度として以前から使われている値を採用した。近年の第一原理計算や室内実験に基づいたコアの電気伝導度の値は数倍から数十倍程度大きい。今年度は、コアの電気伝導度をパラメータとして、それがコアの流れを推定する際にどのように影響するかを調べた。コアの電気伝導度は誘導方程式の拡散項に含まれるので、磁場の動径方向についての2階微分の表現に寄与する。しかしながら、コア内部の磁場を計算するときのテイラー展開の2次の項に関連するだけであり、この点に関しては大きな影響がないことが確認された。一方、磁気地衡流制約の下ではローレンツ力の項が電気伝導度に比例する。そのため、電気伝導度が大きいほどコア内の流れのトロイダル成分が小さくなることがわかった。コア内の流れの推定にはより正確なコアの電気伝導度の値が必須である。
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