公募研究
地球外殻の溶融鉄合金の熱輸送形式は、磁場形成やマントルの対流など、全地球のダイナミクスに大きな影響を与えている。本研究計画では、ハイパワーレーザーショック圧縮が得意とする超高温高圧の生成法を生かして、地球外殻条件の液体鉄合金の生成と観測に応用する。当該年度においては、液体鉄合金の生成が可能であること、また輸送特性に関わる物理パラメータのその場リアルタイム測定が可能であることを実証した。大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの大型レーザーを用いてレーザーショック超高圧実験を行い、約150 GPa及び250 GPaの圧力条件における液体状態の純鉄の生成に成功した。圧力のキャラクタライズは多チャンネルの線結像型速度干渉計を用いて行った。酸化マグネシウムを圧力保持のショックウィンドウに用いた独自のターゲットを開発し、圧力と同時に光反射率を時間分解して測定した。比較のために、約50 GPaの固体鉄状態における光反射率も測定した。その結果、ショック圧縮下の固体鉄の反射率に有意な変化が見られない反面、高温高圧の液体鉄では固体鉄に比べて1桁程度の反射率の低下が確認された。また、ニッケルを10%程度含有した液体合金鉄ターゲットの開発及び予備実験も開始し、自由電子モデルを用いて電気伝導度の変化について検討を着手した。
1: 当初の計画以上に進展している
独自のターゲットと線結像型VISARを中心とした光学的計測系を利用して、150 GPa及び250 GPa領域の圧力条件を高精度にキャラクタライズしながら、光反射率の時間変化を測定できることを実証した。光学特性を明らかにした独自のショックウィンドウ材料により、300万気圧超の領域まで液体鉄測定に耐えうる実験スキームを確立することができた。ニッケルを含有した液体合金鉄ターゲットの開発にも成功し、予備実験を既に開始するとともに、純鉄との電気伝導度の比較検討も既に開始している。
鉄ニッケルだけでなく、鉄シリコンなどの合金鉄ターゲットを開発製作し、前年と同様の手続きで衝撃超高圧実験を実施する。不純物による衝撃波到達タイミングや合金/ウィンドウ界面速度の変化を実験により詳細にモニターする。到達する圧力温度域の変化は輻射流体力学シミュレーションコードを用いて詳細な予測を行い、実験条件の決定に活かす。前年と同様の手続きでハイパワーレーザーショック超高圧実験を実施する。また、その場リアルタイムの温度測定、レーザーパルス波形整形技術を利用した低エントロピー圧縮状態についても検討を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件) 学会発表 (45件) (うち国際学会 23件、 招待講演 3件)
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