研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01125
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝紀 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70202132)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化還元 / オリゴマー / 集積合成 |
研究実績の概要 |
有機酸化還元系は、生体電子伝達系への関与やDNAインターカレーション能などの特性により、医農薬分野で活躍する生物機能分子として高いポテンシャルを持つ。π電子系化合物を利用した分子創薬に於いては、新規な低分子酸化還元系分子骨格の開発ばかりでなく、その骨格の中分子化による酸化還元機能/生理活性の調節が有効なアプローチであると考えた。このようなマルチレドックスサイトをもつオリゴマーは、電子授受以外の外部刺激によっても分子構造の変調が可能なため、モノマーには無い特異な制御性を持つ。本研究では、カスケード環化やフロー合成を利用して効率よく合成される低分子酸化還元骨格を、共有結合で複数連結したマルチレドックス型中分子において、リンカーや連結数に応じた摂動の様子をパラメータ化して理解する。またその基礎的知見を基づき、分子創薬に望ましいパラメータを持つよう特性をチューニングし、生物機能分子開発につなげることを目的として研究を展開している。 新規低分子モノマーとして、平面ディスク形状を持つπ縮環型パラフェニレンジアミンであるbenz[a]indolo[2,3-c]carbazole(BIC)を用い、これらが2つから4つまで連結された一連の電子供与体を合成した。BIC骨格を連結するスペーサーに応じた特徴的な電子的相互作用は、主にディスク状BICの積層/非積層構造によるものと理解され、電解酸化をUV-Vis-NIRスペクトルで追跡した際の吸収変化からも支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にそった結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
4重の鈴木カップリング反応を鍵ステップとして短段階で合成されるテトラアリールアントラキノジメタンオリゴマー化中分子、ならびに、ヘキサアリールブタジエンのオリゴマー化中分子を対象とした研究を展開する。前者は、ジアリールメチレン基と縮合ベンゼン環との立体反発によりバタフライ型に変形した分子であるが、凸面同士、また凹面同士を合わせるように積層することが可能である。一方、ほぼ同時の2電子酸化で生じたジカチオン種では、中央のアントラセンに対して、2つのジアリールメチリウム部位が直交する形になることから、酸化により積層構造が一気に解消される系になり得る。 また後者は、ねじれたπ骨格を持つが、二電子酸化で生じるジカチオンでは、trans-スチルベン骨格が共平面になるよう構造変化する。即ちオリゴマーは、中性状態及び酸化状態のどちららも積層不能ではあるものの、主鎖に沿った共役の切断/伸長が可能な中分子となり得る。スチルベン骨格に対するフッ素置換基の導入で溶解性の向上を、供与性アリール基としてテトラエチレングリコール側鎖を持つアニリン部位の利用で水溶性を獲得することで、酸化還元挙動以外のパラメータも制御する。 いずれのオリゴマーも、重要なパラメータである連結数は、厳密に制御して合成/精製を行う。それぞれのオリゴマーの段階的多段階電子移動挙動は各種ボルタンメトリーから、電荷による構造変化は単離した化学種のX線構造解析及びMacroModel計算から、電荷分布はDFT計算から求める。UV-Vis-NIR、FL、キラル誘導体でのCDスペクトルを系統的に比較から、積層/会合状態に関する情報を得、計算結果と合わせることで、パラメータ化に基づいた分子設計の精度を上げる。
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