研究実績の概要 |
ゴニオドミンAの全合成研究:本年度はまず、昨年度までに開発したゴニオドミンAのマクロラクトン骨格の合成ルートにおいて課題として残されていた保護基について再検討を行った。これまでの合成では、C7およびC11位ヒドロキシ基の保護基としてtert-ブチルジメチルシリル(TBS)基を用いていたが、合成後半における脱保護において、長時間の反応時間を要し、かつ反応収率が低いという問題点があった。今回新たにジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)基に変更することにより、脱保護の反応時間の大幅な短縮、収率の改善、および反応の再現性を実現した。さらに、合成したマクロラクトン骨格から、BC環部スピロアセタール骨格を構築した後に、F環部ヘミアセタールを合成し、アセチル基の除去を行うことによって、ゴニオドミンAのアセトニド保護体の合成を達成した。しかし、予想に反して、合成した化合物のプロトンNMRスペクトルデータは、天然物由来の標品のそれと一致しなかった。この結果から、これまでに報告したゴニオドミンAの立体配置の帰属に誤りがある可能性が強く示唆された。 ポルチミンの全合成研究:本年度は、光学活性なHajos-Parrish型ケトンを出発物質として、立体選択的な1,4還元、Rubottom酸化を鍵反応としてシクロヘキセン環部分を含む酸塩化物を合成した。また、鈴木-宮浦反応とスパルテインを用いたジアステレオ選択的なスタニル化反応を鍵工程としてα-アセトキシスズ化合物を合成し、シアン化銅触媒を用いたStille型クロスカップリングによって上記の酸塩化物と高収率で連結し、α-アセトキシケトン構造を含むポルチミンのC1-C13およびC14-C23を含む炭素骨格の合成に成功した。
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