研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01127
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
徳山 英利 東北大学, 薬学研究科, 教授 (00282608)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機化学 / アルカロイド / 二量体 / 中分子 / カップリング / インドールアルカロイド |
研究実績の概要 |
本研究課題では、二量体型生物機能中分子アルカロイドの収束的合成実現のため、単量体の合成終盤での画期的なカップリング反応の開発と、従来の多段階合成の合成設計を根本から変革する、合成終盤での酸化的修飾法の開発と全合成への応用に取り組んでいる。本年度は、二量体型インドールアルカロイド、ハプロファイチンの高収束的第二世代全合成を達成した。本合成では、AgNTf2 を用いたFriedel-Crafts 反応によるβカルボリンと右部アスピドスペルマ化合物との多環性化合物同士の直接的カップリングを実現した。その高い収束性から、誘導体合成への展開が期待される。また、独自に開発したチオールを用いたアミンの空気酸化反応は、既存の酸化反応にはない高い官能基共存性を有している点で優れている。ボカンジミンの合成研究においては、インドール部とピペリジン環の縮合と、続くインドール2位選択的なC-H官能基化を利用した9員環ラクタムの構築に成功した。その後の合成終盤での第三級アミン選択的な酸化反応により、単量体の主骨格であるアスピドスペルマ骨格の収束的構築法を確立した。ピロロインドールアルカロイド類の全合成とエピゲノム創薬を指向した構造活性相関に関しては、酸素雰囲気下、触媒量の鉄フタロシアニン錯体を用いたトリプタミン誘導体の酸化的二量化反応の開発に成功した。確立した方法論は、既存の手法にはない高い官能基共存性や広い基質一般性を有しており、本化合物群の網羅的かつ収束的合成を可能とする。この結果は、強力な抗がん活性を有し、さらにエピゲノム創薬への展開が期待されるメリナシディンIVの全合成に重要な足がかりを築くことできたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に確立したアスピドスペルマアルカロイドのカップリング反応をもとに、二量体型インドールアルカロイド、ハプロファイチンの高収束的全合成を達成した。また、ボカンジミンの合成において、アスピドスペルマ骨格の効率的新規構築法も確立し、全合成への足がかりを築いた。さらに、鉄フタロシアニン錯体を用いたトリプタミンの酸化的二量化反応の開発に成功した。本手法は、世界初の酸素をバルク酸化剤とする触媒反応であり、その独自性や有用性から評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ボカンジミンの合成においては、本年度確立した骨格構築法をもとに、その単量体ユニット、デオキソアポジンの全合成を達成する。その後、エナミンと不飽和イミンとの形式的な[4+2]環化反応を経た両ユニットのカップリングを行ない、二核性インドールアルカロイド、ボカンジミンの全合成を達成する。また、独自に開発した酸化的二量化カップリングを用いて、強力な抗がん活性を有し、さらにエピゲノム創薬への展開が期待されるメリナシディンIVの全合成を達成する予定である。また、本酸化反応を、トリプトファンを有するオリゴペプチドやポリペプチドにも適用し、非天然型の中分子ペプチドの創製も行なう予定である。
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