研究実績の概要 |
生物活性中分子は、その複雑な構造ゆえに、機能化が容易ではないことに加え、中分子で構成される化合物ライブラリーは未だにほとんど整備されていないため、新たな機能を示す中分子を見いだすのは困難である。これに対して、本研究では、中分子へのアジド基導入や、ジアジドプローブ化や多機能性プローブ化、さらに、逐次連結による中分子ライブラリー構築の実現を目指し、研究に取り組んでいる。平成29年度は、前年度に見いだしたアジド基の導入に関する知見などをもとに、複数の異なる種類のアジド基を有する分子の創製に成功し、逐次クリック反応を行うための基盤となる手法を確立できた。また、末端アルキン部位を有するシクロオクチンなどの、2種のアジド化合物を順次連結できる二官能性リンカーの開発にも成功し、生物活性中分子に機能を効率的に付与するための技術を開発できた。加えて、環状アルキンの反応相手としてアジド基以外の連結部位を探索していくなかで、チオフェン-S,S-ジオキシドが有用であることを見いだし、この連結部位がアジド基と区別して利用できることも明らかにできた。さらに、中分子を集積するための重要なプラットフォーム分子の一つとして、さまざまな反応相手と反応する高反応性化学種アラインに着目して研究に取り組んだ。その結果、ヘテロ原子を置換基にもつアラインや複素環が縮環したアラインの発生を利用することで、多官能基化された多彩な芳香族化合物群の合成に成功し、芳香族中分子類の創製に役立つ手法を開発できた。
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