研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01137
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大森 建 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50282819)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フラボノイド / ポリフェノール / カテキン / ロテノン / vicenin-2 |
研究実績の概要 |
ポリフェノールは、植物全般に豊富に含まれる“ユビキタス”な物質群であり、古来より染料や鞣皮料あるいは健康薬などとして広く利用されてきた。そのため、有用生理活性物質の宝庫と期待されるが、天然からは類縁物質の混合物としてしか得られず、個々の化学的性質が明らかにされた例は限られている。このような背景の下、本研究においては、天然から入手困難な複雑なフラボノイドを合成的アプローチにより構造が定まった単一化合物として得、それらの化学的諸性質の理解を通じ、未知であるポリフェノールと生体高分子との相互作用の解明や新機能の発見に寄与することを目指す。 本年度の研究においては、主に2つの主題について検討を進めた。まず、フラボノイドのde novo 合成を行うため、フルオロベンゼン誘導体を出発原料に用いた合成法を検討した。その結果、芳香族求核置換反応によるフルオロ基から酸素官能基への変換およびオルトメタル化を契機とした炭素-炭素結合形成法を鍵とした効率的な合成法を見出すことができた。そして2つめの課題として実際にそれらを利用した天然物合成を検討した結果、まずアリールC-グリコシド系フラボノイドvicenin-2の全合成に成功した。さらに、フルオロフェニル基を備えたエポキシアルコール誘導体のグループ選択的な1,2-転位反応と上述の芳香族求核置換反応によるオキシ環形成反応を組み合わせることにより、イソブラボノイド類縁体のひとつであるロテノンの不斉全合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子量フラボノイドの合成に必要な合成モジュールの効率的な合成法を見出すなど、計画した研究課題について着実に成果を上げることができた。また、本年度の検討において1,2-転位反応を利用したあらたなイソブラボノイド合成法も開拓できるなど、来年度以降、あらたな発見に繋がりうる成果も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討結果を基に、より複雑な構造をもつフラボノイド、特にこれまで合成例のない累積二重連結型フラバンオリゴマーの合成法について集中的に検討を進める予定である。また、オリゴマー化を行う反応自体の検討も並行して行い、より効率的な反応条件を見出すことを目指す。
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