ポリフェノールは、植物全般に豊富に含まれる天然有機成分であり、古来より染料や鞣皮料あるいは健康薬等として、広く利用されてきた。そのため有用生理活性物質の宝庫と期待されるが、天然から高純度の化合物を得ることが難しいため、個々の化学的性質が明らかにされた例は限られている。このような背景の下、本研究においては、天然から入手困難なフラボノイド系ポリフェノールを合成により構造が定まった単一化合物として得、それらの化学的諸性質の理解を通じ、未知であるポリフェノールと生体高分子との相互作用の解明や新機能の発見に寄与することを目指す。当研究事業の最終年度である本年度においては、次の課題に取り組み成果を得た。まず、これまでの研究により確立したフラボノイドのde novo 合成法を活かし、希少フラボノイドの一つであるアフゼレキンおよびエピアフゼレキン誘導体の合成を行った。そして合成したそれらフラバン単位を本研究で開発したアヌレーション法とオルトゴナル法を用い、順次結合させることにより、甘味を呈するフラバン三量体、Selligueain Aの初の効率全合成に成功した。また、得られた知見をもとにさらに合成難度の高いフラバン4量体の合成を試みた結果、その基本オリゴマー構造を構築するための基本合成技術を開拓することができた。本法の鍵は、フラバン骨格にジチオ基を導入することにより、オルトゴナルアヌレーションを可能とした点にある。本法は、集積二重連結型フラバンオリゴマーの一般的合成法となり得る信頼性の高い方法であり、今後、様々な誘導体の合成に応用可能と期待される。
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