研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01142
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
柴田 哲男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40293302)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フロー / トリフルオロメチル / フッ素 / 医薬品 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い,抱水フロラールを用いたトリフルオロメチル化反応を検討した。しかし,反応がほとんど進行しなかった。そのため,集積化反応や中分子合成をトリフルオロメチルトリメチルシラン(TMSCF3)を用いた手法でフロートリフルオロメチル化反応を検討した。基質として医薬品中間体となり得る1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-3-シクロプロピルプロプ-2-イン-1-オンを用いた。パスツールピペットにフェノキシカリウム/セライト(1/1)の混合物を充填し,基質とTMSCF3をトルエン/塩化メチレンの混合溶媒に溶解し,その溶液をパスツールピペットに流した。しかし反応はほとんど進行しなかった。そのため,収率を向上させるために,塩基の検討を行うこととした。フェノキシカリウムの代わりに酢酸リチウム,水酸化カリウム,フッ化セシウムを試したが収率の改善は見られなかった。次に,塩基として酢酸リチウムを用いて溶媒をDMFに代えたところ収率が大きく向上し,73%収率で目的とするトリフルオロメチルアルコール体を得ることに成功した。さらに,塩基の検討を重ねた結果,水酸化カリウムを用いたとき,88%という高収率で目的物が得られた。本条件を最適として,フロー合成法を用いたトリフルオロメチル化反応の基質一般性の検討を行った。電子供与性基,電子求引性基を有するベンゾフェノンに対しても良好な収率でトリフルオロメチルアルコール体を得ることに成功した。また,アセトフェノン類に対するトリフルオロメチル化反応も問題なく進行した。また,環状ケトン,アルキニルケトン,カルコンなどのケトンに対してもトリフルオロメチル化反応が進行した。さらに,ケトンだけでなくアルデヒド類に対しても進行する。電子供与性や電子求引性基を有する芳香族アルデヒド,ヘテロ芳香族アルデヒドでもトリフルオロメチル化体を得ることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抱水フロラールを用いたトリフルオロメチル化反応では,目的の結果は得られなかったが,メチルトリメチルシランを用いることにより,フロートリフルオロメチル化反応に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で失敗に終わった抱水フロラールの反応をさらに検討する。昨年度の経験から,問題の主要因は,市販されている抱水フロラールの脱水である。おそらく水を除ききれないために反応が進行しないと推測した。そこで,脱水処理法の検討から開始する。一方,短寿命であるトリフルオロメチルアニオンの制御をフロー反応のみならず,嵩高い塩基やFrustrated Ion Pairによる短寿命活性種安定化と空間的集積化,フロー反応の組み合わせ技によるトリフルオロメチル化反応の開発を検討していく。トリフルオロメチル源とて安価なフルオロホルムも検討する。
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