研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01147
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高須 清誠 京都大学, 薬学研究科, 教授 (10302168)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 中分子 / 反応集積 / シクロブタン / 環化付加 / 連続反応 |
研究実績の概要 |
分子ひずみをもつ中分子生物活性天然物の短工程合成を目指して、基本反応開発の開発、フロー反応への代替、合成工程の検討を行った。 1.プロトイルダン型骨格をもつメレオリドの合成研究では、ケテンシリルアセタールとプロピオン酸エステルの触媒的[2+2]環化付加反応を開発し、基本骨格および必要官能基の導入を達成した。特に、この合成法ではきわめてひずんだシクロブテンを簡便に構築できるだけでなく、酸素官能基をあらかじめ基質に導入することができるため有用であった。特に四員環上への酸素官能基の導入法としてCurtius転位と水和を利用する方法が有効であることを明らかにした。 2.海洋ステロイド・シナンスレノールAの合成研究では、光照射6π電子環状反応において光フロー装置を利用することで生産性の向上を達成した。電子環状反応ではヨウ素を酸化剤として用いているが、溶媒の溶存酸素を巧妙に使うことで触媒量での添加で反応が進行し、光効率も広報した。数工程後ののスピロシクロプロパン環導入では収率の向上とジアステレオ選択制の向上を達成できたが、不斉中心のラセミ化が抑制できないとの問題点を明らかにした。現在フロー反応の適用を検討している。 3.ガノシネンス酸の合成では、基本となる[4+2]環化付加と[2+2]環化付加をモデル基質で行い一定程度の成功をおさめたが、収率や立体選択性、基質一般性に大きな課題が残っている。 4.中分子ナノグラフェンの合成を実施した。抗腫瘍活性アルカロイドの合成の過程で見出した特徴的な反応を活用することで、未来材料として期待できる5員環や7員環を含む多環芳香族炭化水素の合成に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガノシネンス酸の合成を担当している学生の指導が行き届かなかったため、思うように進行していない。また、年度途中に准教授の栄転があり、学生のうち数人を指導委託として彼に同行させた。その余波で研究室人員が減り、計画通りに実験が進まなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
ガノシネンス酸合成の検討について増員をし、計画の実行に注力する。 ガノシネンス酸の骨格合成には、フロー反応もしくはワンポット反応による反応集積を検討する。その際に加圧条件もしくは光反応条件といったこれまでと異なる反応活性化を用い、課題の解決に向かう。 また、その他の標的天然物の合成については順調に進んでいるものの、大量合成という点では課題が残る。これまでの合成工程を見直して合理的合成工程へのブラッシュアップをはかる。
|