研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01152
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
滝澤 忍 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50324851)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 卑金属触媒 / 酸化反応 / 連続反応 / マイクロミキサー / 固定化触媒 |
研究実績の概要 |
申請者は、二核バナジウム触媒や酸塩基有機分子触媒などの多機能不斉触媒の開発に成功している。本触媒を2-ナフトールのラジカルカップリング反応やエノンとカルボニル化合物との炭素-炭素結合形成反応である森田-Baylis-Hillman(MBH)反応に適用すると高効率で反応が進行する。触媒を構成する複数の活性化部位による基質の多点配向制御が重要な役割を担っており、酵素的作用機序を持つ触媒として数多くの知見を得ている。 そこで本研究では、多機能不斉触媒の多点制御能を活用してラセミ体としての合成も難しい、多置換・多官能性キラル有機化合物の骨格の触媒的かつエナンチオ選択的構築を検討した。生物活性天然物や医薬原料の供給に有効な実用的不斉分子変換法の確立を目指した。 その結果、市販化成品から短工程かつアトムエコノミカルに、抗菌作用を有するsorazolon E2やelacomine analogue、多官能性ヘテロ環状化合物の触媒的不斉合成に成功した。ハイブリッド型キラルバナジウム触媒を用いることで光学活性なオキサ[9]ヘリセンの効率的な触媒的不斉合成を達成した。Rauhut-Currier (RC)/[3+2]反応による三連続不斉炭素の構築を伴う多官能性三環式複素環の効率的合成を展開し、バッチ法ではアレン酸エステルのオリゴマー化が主反応となり、目的の三環式化合物は39%(80% ee)と低収率となる本反応を、フロー合成する事で触媒と反応基質の効果的な混合が可能となった結果、目的の三環式化合物の収率向上(70%収率, 94% ee)を達成した。現在、固定化触媒を用いたフロープロセスを構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で得られた成果を、14報の原著論文と2報の著書として発表することができた。中でもChem. Asian J.誌に報告した「Short Syntheses of 4-Deoxycarbazomycin B, Sorazolon E, and (+)-Sorazolon E2」は、”Most Accessed Paper May 2017”として、Chem. Commun.誌に報告した「Multifunctional catalysis: Stereoselective construction of α-methylidene-γ-lactams via amidation/Rauhut-Currier sequence」と Chem. Pharm. Bull.誌に報告した「Chiral Organocatalyzed Intermolecular Rauhut-Currier Reaction of Nitroalkenes with Ethyl Allenoate」は、論文表紙としてそれぞれ評価された。
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今後の研究の推進方策 |
申請者が開発したバナジウム金属触媒、酸塩基複合有機分子触媒、及び金属・有機分子ハイブリッド触媒等の多機能不斉触媒を活用することで、光学活性オキサヘリセンや連続キラル四置換炭素を含む複素環、軸性キラリティーを有するアルカロイドなど、ラセミ体として得るのも困難な複雑化合物の短工程合成が可能となってきている。 今後は、多機能触媒が促進する連続反応をさらに集積化し、既存法(バッチ法)では合成が困難な多置換・多官能性キラル骨格の触媒的かつエナンチオ選択的構築法を開拓する。触媒をリサイクル可能な固定化触媒へと導き、省資源・環境調和型不斉反応プロセスへと展開する。複雑な多成分連結反応をマイクロフロー合成に組み込むことで、生物活性天然物や医薬原料の供給に有効な実用的不斉分子変換法の確立を目指す。
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