研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01153
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡野 健太郎 神戸大学, 工学研究科, 特命准教授 (30451529)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ハロゲンダンス / ヘテロ芳香族化合物 / チオフェン / フラン / ピロール / マイクロフロー / 配向基 / ワンポット反応 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、バッチ系のハロゲンダンスにおいて、リチウムアミドを用いるワンポットハロゲンダンス・根岸カップリングを開発した。本方法は、後の官能基変換の足がかりとなるブロモ基を位置選択的に導入でき、生物活性化合物にも見られるアリール化チオフェンの一般的合成法を確立した。また、マグネシウムビスアミドMg(TMP)2・2LiClが室温下、円滑にハロゲンダンスを進行させることも確認した。従来用いられていた、LDAやLiTMPなどのリチウムアミドとほぼ同等の活性を示している。また、エステルを有するチオフェンを用いると、マグネシウムビスアミドを用いた場合のみ、ハロゲンダンスと続く官能基化が可能であることも明らかにした。本方法は、医薬候補化合物の合成にも有用であった。また、本反応では、エステルが配向基として作用し、従来とは異なる1,3型の転位様式でハロゲンダンスが進行した。本知見を基に、これまでほとんど報告例のないフラン類のハロゲンダンスを検討したところ、ベンゾオキサゾールも配向基として有用であることがわかり、従来のブロモフランのハロゲンダンスでは必須であった、t-ブトキシカリウムの添加が必要ないことも明らかにした。本方法は、さらに、ワンポットハロゲンダンス・根岸カップリングに展開でき、官能基化された共役系化合物の合成に成功した。また、ブロモフランのハロゲンダンスでは、ブロモチオフェンに比べて、反応温度と反応時間の制御が重要であり、アニオン中間体の取り扱いについて、その他のヘテロ芳香族化合物のハロゲンダンスについても今後の指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配向基を用いる手法により、これまでに報告例がないブロモピロールもハロゲンダンスを起こすことを確認している。現在、ピリジンなどのヘテロ芳香族ハロゲン化物の検討も行っている。ブロモチオフェン類については、バッチ系の反応条件を参考に、マイクロフローを用いてハロゲンダンスが円滑に進行する条件を確立した。現在は、母核に応じたフロー系反応の条件検討を行っている。さらに、LDAなどのリチウムアミドを用いた場合に、ハロゲンダンスの後に開環反応を経て分解する2-ブロモチアゾールについて、フロー反応装置を用いてハロゲンダンス前の短寿命アリールリチウム種を捕捉する条件も見出した。現在、溶媒や塩基、ハロゲンの種類の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2-ブロモチアゾールなど、従来のバッチ系ではアニオン中間体が分解し、円滑にハロゲンダンスが進行しないヘテロ芳香族化合物について、マイクロフローの特徴を生かして反応条件を検討する。28年度の検討において、基質一般性や適用可能な求電子剤を大幅に拡大する。リチウムアミドを用いるフロー系反応を行い、バッチ系で損なわれるエステルなどの求電子的な官能基を保持できる条件も探索する。 ハロゲンダンスの長所である、官能基導入の足がかりとなるハロゲン原子(ブロモ基)が転位しながら、求電子剤と反応する合成的有用性を示すため、ラメラリン類の合成に取り組む。一度目のハロゲンダンスで5位に移動したアニオンの一電子酸化を経るラジカル的分子内カップリングを行う。反応が円滑に進行しない場合は、二価パラジウムなどの遷移金属触媒によるカップリングにより三環性中間体を得る。次に、二度目のハロゲンダンス/クロスカップリングにより、3位にアリール基を導入しながら4位をブロモ化する。このブロモ基を足がかりにラメラリンIへと導く。本合成経路はカップリング種を変更するだけで多様な誘導体を網羅的に合成できる。 フロー系ハロゲンダンスにおいてエステルが保持される条件をもとに、フランやピロールの集積型官能基化を行い、材料や生物活性物質の合成に応用する。チオフェンと比べて電子豊富なフラン/ピロールは酸化されやすく、電子求引性エステルを含む基質を設定することで取り扱いが容易になる。また、二回目、三回目のハロゲンダンスを、一回のフロー系で実施可能なシステムの構築にも取り組む。
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