研究実績の概要 |
平成29年度は、バッチ系のハロゲンダンスにおいて、マグネシウムビスアミドMg(TMP)2・2LiClが室温下、円滑にハロゲンダンスを進行させることも確認した。従来用いられていた、LiTMPなどのリチウムアミドとは異なり、反応条件を適切に選択することで、ハロゲンダンスを停止させることも可能であった。これにより、置換様式の異なる多置換チオフェン類の合成が可能になった。また、マイクロフロー反応装置を用いることにより、リチウムアミドを用いるバッチ系では不可能であった変換にも成功した。また、非対称なブロモチオフェンやブロモフランのハロゲンダンスに、置換基がおよぼす影響を検討した。その結果、エステルやアミドが配向基として作用し、従来とは異なる1,3型の転位様式でハロゲンダンスが進行することを確認した。さらに、オキサゾリンを配向基として利用することで、これまでに報告例がないブロモピロールにおいてもハロゲンダンスが円滑に進行することを明らかにした。そこで、ハロゲンダンスの長所である、官能基導入の足がかりとなるハロゲン原子(ブロモ基)が転位しながら、求電子剤と反応する合成的有用性を示すため、多置換ピロールアルカロイド類の網羅的合成経路の確立を目標として、合成研究に取り組んだ。ハロゲンダンスを経て5位に移動したリチウム種を亜鉛にトランスメタル化し、パラジウム触媒による根岸カップリングにより三環性重要中間体を得た。
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