研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01154
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
垣内 喜代三 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (60152592)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フローマイクロリアクター / 有機光反応 / 不活性試薬 / 二相系セグメントフロー / CMOSイメージセンサ / オンタイム有機光反応システム |
研究実績の概要 |
フローマイクロリアクター中での不斉[2+2]光付加環化反応を行い、有機溶媒一相系の反応だけでなく、意図的に水を不活性試薬として導入した有機相と水相からなるセグメントフロー条件下で反応を検討した。その結果、一相系でもバッチ型反応器に比べて加速したことに加え、セグメントフロー条件にするとさらに反応が加速し、最高で2倍加速することを見出している。 この要因を明らかにするために、キラル補助基を含まないベンゾイルギ酸エチルエステルと2,3-ジメチル-2-ブテンとの同様のパテルノ-ビューヒ型[2+2]光付加環化反応をモデル反応として、フローモード効果についてより詳細に検討を行った。用いる溶媒、その粘度と屈折率、反応時間、温度、濃度などのパラメータを系統的に調査した結果、屈折率の違いによる光閉じ込め効果が、フローマイクロリアクターを用いた光反応の高効率化の大きな要因として働いているとの仮説を得た。 センサの開発については、偏光分析性能の制限要因となっていた、偏光分析CMOSイメージセンサにおける拡散キャリアの問題、およびデータ記録システムにおけるクロストークの問題を詳細に検討した。そのうえで、キャリア拡散の影響を抑制した新しい偏光分析CMOSイメージセンサを設計・試作し、クロストークを抑制したシステムと組み合わせてインライン不斉分析システムに組み込んだ。溶媒系の見直しなどの実験系の改善を含め、大幅な計測データの安定度向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以前にフローマイクロリアクターを用いた有機光反応の高効率化には、不活性試薬を用いたスラグフローモードが有効であることを見出していたが、今回その一般性を確立するとともに、詳細なパラメータ解析により、光閉じ込め効果が有効に働いているという仮説を得たことは、次年度のこの仮説の立証へとつながる成果となっている。 また、オンタイム有機光反応システムの開発でも、より精度の高い不斉計測センサへの改良の作成が達成され、フローマイクロリアクターにおける反応状況のin situ(その場)計測において、これまでより不安定性を抑制した有効なデータ取得が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
他の有機光反応にも展開し、光閉じ込め効果の実証とともに、さらなる有機光反応の効率化を目指す。例えば、生成物の単離がより簡便な不活性試薬としての窒素ガスや、イオン性液体を用いた反応も検討する。 平成28年度に新規開発・導入した偏光分析CMOSイメージセンサの特性を生かした不斉度モニタリングの高性能化に加え、特定波長の光に対する吸光度を同時計測する光学系の拡充を行う。これらの機能向上により、反応の進行状況(転化率)と不斉度を同時にモニタリングできると期待される。
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