研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01156
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
難波 康祐 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (50414123)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 全合成 / palau'amine / kansuinine A / 高効率合成 |
研究実績の概要 |
Palau'amineの短段階合成を達成するために、CF環グアニジノ基を導入した前駆体でのD/E環構築に取り組んだ。E環に相当するシクロペンタン環上にピラゾール環を縮環させた後、Strecker反応によって含窒素4置換炭素を構築した。ついで、ピラゾリジン環上の二つの窒素にグアニジノ基を導入することで、CF環グアニジの基を導入したD/E環構築前駆体を合成した。この基質に対して強塩基を作用させると、N-N結合の開裂に続くアミドアニオンの付加により、D/E環となるトランスアザビシクロ[3.3.0]オクタン骨格を構築できた。すなわち、palau'amine合成の最大の難関とされる5,5-トランス環の構築を、予めCF環上にグアニジノ基を導入した基質で達成できた。この成果により、第一世代全合成に比べて大幅な工程数の短縮が可能となった。今後は、第一世代合成の半分以下の工程数での全合成の達成を目指す。 また、Kansuinine A の左フラグメント及び右フラグメントの合成を完了し、それらの連結にも成功した。今後は、マクロ環化の検討を行い全合成を達成する予定である。 さらに、生物活性天然中分子の機能解析に必要となる蛍光分子の開発研究を行い、独自に開発した1,3a,6a-トリアザペンタレンの最適化および応用研究を展開した。これらの研究成果により、1,3a,6a-トリアザペンタレンが生物活性天然中分子の機能解析研究に有効であることを明らかにできた。 以上の研究成果により、平成28年度では国内学会発表34件、国際学会発表1件、招待講演6件の成果を得た。また、原著論文としては査読付き論文7報を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Palau'amineの短段階合成を達成するためには、CF環のグアニジノ基を導入した基質で、トランスアザビシクロ[3.3.0]オクタン骨格(5,5-トランス環)を構築する必要があった。現在までに、ストレッカー反応を用いることで、CF環上にグアニジノ基を導入した基質での含窒素4置換炭素の構築に成功した。この前駆体に対して、第一世代の5,5-トランス環構築反応を適用したところ、5,5-トランス環(D/E環)の構築が確認できた。これにより、palau'amine合成における最大の課題を解決することができたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。 また、Kansuinine A の左フラングメントと右フラグメントの合成を達成した。また右フラグメントの合成では、更なる合成ルートの最適化を行い、大幅な工程数の削減にも成功した。それらのフラグメントの連結は円滑に進行し、残る課題は最後のマクロ環化のみとなった。以上の結果より、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
Palau'amineの第二世代合成研究では、CF環上にそれぞれグアニジノ基を導入した基質での5.5ートランス環構築に成功したことから、今後は本法を適用したpalau'amineの短段階全合成および種々の類縁体の迅速な合成を目指す。まずは、活性にあまり影響を及ぼさないと考えられるクロル基および1級アミノメチル基を除去した誘導体を合成し、このものがpalau'amineと同等の活性を有するかについて明らかにする。この誘導体に活性が認められた場合には、本誘導体の15工程以下での合成を達成する。またこれと並行して、palau'amineの類縁天然物であるStyloguanidineの初の全合成を目指す。 Kansuinine A の全合成研究では、左フラグメントと右フラグメントの連結法について更なる効率化を試みる。具体的には、マイクロリアクターを用いたカップリング反応によって、大量合成に適用可能な条件の確立を目指す。本法により十分な量のカップリング体が得られるようになれば、最後のマクロ環化反応の検討を行い全合成を達成する。
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