研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01157
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ボンクレキン酸 / 有機合成 / アナログ / ミトコンドリア / 細胞死抑制 |
研究実績の概要 |
カビ毒由来の中分子であるボンクレキン酸(BKA)はミトコンドリアのアデニンヌクレオチド輸送担体(ANT)の機能を阻害してATPの産生を抑制し、近年では細胞死の抑制効果も報告されている重要な生化学試薬である。著者らは既にBKAの効率的集積型全合成に成功している。本年度はこの方法を基盤にBKAを再全合成し約10 mgの純粋なBKAを得ることができた。それでも総工程数が30を超え、量的供給に関して現実的とは言い難い。そこで、本来の活性を大きく損なうことなく量的供給が可能なアナログの開発を目指すこととした。本年度は従来の構造活性相関研究に基づき、活性発現に必須な官能基や部分構造を有する構造簡略化アナログの設計と合成を行った。BKAが有する1位、22位、24位の3つのカルボン酸と共役二重結合は活性発現に必須であることが既に判明していたので、それらの重要部分構造は残し、それらを繋げる炭素鎖に関して不斉炭素および多置換二重結合を排除して合成工程数を減じた単純なアルカンとした構造単純化アナログ、及び将来的に機能性官能基の足場となるようなベンゼン環を炭素鎖中に挿入した配座固定型アナログを分子設計し、炭素鎖長を様々に変化させた数種類のBKAアナログを合成した。具体的には、直鎖型アナログは末端に官能基を有する長鎖アルカンをWittig反応等で調製し、それを酸化、高井反応、鈴木反応、AZADO酸化で合成した。配座固定型は3置換ベンゼンにダブル園頭反応で調査を導入し、水素化反応、酸化、高井反応、鈴木カップリング等を経て、合成した。その結果、合成工程数は20以下に抑えることができた。それらのアナログに対してATP産生阻害および細胞死抑制活性に関する生物試験を行った結果、炭素鎖長が活性発現に重要であり、BKAと同等の炭素鎖長が最も活性が強いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
簡略化アナログの合成過程において、スケールアップしたところ、還元反応過程において予想外の保護基の脱保護反応が進行してしまい、反応条件の再検討を余儀なくされたため、合成の完了が数か月遅れる見込みで、平成28年度末現在で「やや遅れている」という進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
スケールアップに対応できるような反応条件を探索し、簡略化アナログの合成を進める。
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