研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01160
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
菅 敏幸 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10221904)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Ugi反応 / TAN1251 / 4成分集積 / Dieckmann縮合 / オキシム / エナミド / 還元 / 立体化学 |
研究実績の概要 |
TAN1251類は、1991年武田薬品工業の研究グループにより単離されたアルカロイドで、ムスカリン受容体に対して強力な親和性を有する。また、二環性骨格の1,4-diazabicyclo[3.2.1]octane環とシクロヘキサノン環がスピロ結合したユニークな構造上の特徴も有している。我々は、Ugi反応を活用することで効率的合成が可能になると考え、本合成研究に着手した。Ugi反応では、ケトン、アミン、カルボン酸と当研究室で開発したイソニトリルを室温にて混合するのみで4成分集積反応が進行し、含窒素四置換炭素の構築とTAN1251の中心骨格構築に必要な官能基の一挙導入が可能となった。続いて、イソニトリル由来のアミド結合の切断と塩基性条件の分子内Dieckmann縮合により5員環ラクタムを構築しスピロ骨格を構築した。続いて、ラクタム上窒素原子の立体化学の制御は、オキシムあるいはエナミドの還元により立体特異的に達成した。本反応では、スピロ環側鎖の立体化学により立体化学が制御されることが明らかとなった。すなわち、エナミドの還元ではPt触媒が一級水酸基に配位することで、望みの立体化学を有する化合物が得られた。一方、オキシムの還元では亜鉛がオキシムに配位した中間体が立体障害を避けるように、βに配位した繊維状態を経由することで単一化合物が得られた。引き続き、生合成仮説に基づくアミノ基とアルデヒドとの分子内脱水縮合反応を行い1,4-diazabicyclo[3.2.1]octane環を構築した。最後に、エチレンケタールを脱保護することでTAN1251の全合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、2年間にて計画していたTAN1251の全合成を単年度にて達成した。すなわち、シクロへキサノン誘導体 18にウギ反応を行い含窒素スピロ環骨格の構築を行った。引き続き、ウギ集積体の塩基処理によりスピロラクタムの高徳をおこなった。さらに、スピロ環側鎖の立体化学により立体化学が制御されるエナミドとオキシムの還元反応を見出すこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、固相連結型のイソニトリルを固相連結型へと展開し含窒素化合物ライブラリー構築を行う。固相合成は、精製操作(分液とカラム等)を必要としないため、ライブラリー構築の強力な手法となる。そのため、多様性指向合成として固相上でウギ反応を行う報告は多く存在するが、C-端を容易に変換可能なイソニトリルは存在しない。
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