公募研究
免疫調節機構は、複雑な複数の分子認識システムとネットワーク型の信号伝達機構によって常に調節・維持されており、免疫調節のバランスを人為的に制御するためには、複合的に相互作用する機能集積した中分子構築が最適であると考えられる。本研究では、免疫機構のバランス調節を可能とする免疫調節機能を集積した複合型中分子の創製を行うことを目指している。すなわち、その基幹部分の構造として自然免疫受容体TLRあるいはNLR関連リガンドあるいは脂質抗原を認識するCD1dリガンドを用い、他の活性調節因子を複合化あるいは機能解析のための標識を複合的に付加した分子の開発を行う。本目的のため、まず、基幹となる免疫調節性の化合物合成を行った。すなわち、これまで申請者らが複合化による強い相乗的活性化を観測している自然免疫受容体TLR2リガンドであるリポペプチドおよび関連脂質構造、NLRリガンドの中でもNod1あるいはNod2リガンド、および自然免疫と獲得免疫を連携し免疫バランス決定において大きな役割を果たしている脂質免疫受容体CD1dリガンドを基幹構造として合成した。また、特にリポペプチド構造を用いて複合化手法の確立と機能性構造を複合化することに成功した。機能性構造としては、種々の標識基導入に成功しており、TLR2リガンドの蛍光標識体については、細胞イメージングへの展開も行いその細胞内挙動の観測に成功しており、今後、これらの成果を基に、複合型中分子構造を利用した免疫調節と機能解析を目指し、さらに研究を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
免疫機構の調節のため、複合的に相互作用する機能集積した中分子の設計・合成を進めており、本年度の研究においては、その基幹部分の構造として、天然型あるいはその類縁体である種々の構造について、新規合成法の確立と活性化合物合成に成功した。開発した合成法については、現在、関連化合物合成に展開している。合成手法確立に際しては領域内での共同研究について複数のグループと積極的に進めるとともに、国際共同研究についても幾つかのグループと行っており、得られた結果については学会発表および論文発表を行うとともに論文投稿準備を進めている。また免疫調節性の化合物については、活性評価方法および細胞内の挙動解析についての手法を確立し、合成化合物の活性測定を行い、有望な化合物を得ることに成功している。複合化手法についても複数の方法を確立し、標識基導入に応用することにより細胞イメージングを行い、活性構造の細胞内挙動解析を行った。
前年度の成果に基づき、複数の免疫調節機能を集積した複合型中分子の創製を行うため、引き続き基幹となる免疫調節性の化合物ライブラリ構築を行うとともに、複合化中分子構造構築と、免疫調節効果の評価を行う。すなわち、TLR2リガンドであるリポペプチドについては、選択的機能発現と複合化による相乗作用の調節を考慮した分子設計により、その免疫調節の機能解明を進めると共に、標識化合物を用いた細胞内での挙動とその活性化機構の解析を行う。また、脂質抗原を認識するCD1dの活性化に関与する部分構造の複合化あるいは選択性を制御可能な複合型中分子の創製を進める。得られた免疫調節性中分子については、細胞株を用いたサイトカイン誘導の評価と免疫調節におけるバランスの解析、T細胞分化調節への機能解析を行い、特徴的な活性を持つ分子については、in vivoでの解析、活性化機構の解析および細胞内イメージング等の機能解析を行い疾患治療の基盤となる知見を得る。本研究により、免疫機構が深く関わる種々の生体機能についての理解を深め、利用展開を図る。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 9件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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http://www.chem.keio.ac.jp/~fujimoto-lab/