研究領域 | 反応集積化が導く中分子戦略:高次生物機能分子の創製 |
研究課題/領域番号 |
16H01166
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
島本 啓子 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・構造生命科学研究部, 主幹研究員 (70235638)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 脂質 / 合成化学 / 有機化学 / 生体膜 / 膜挿入 |
研究実績の概要 |
MPIaseは3種のアミノ糖ユニットが10回程度繰り返した糖鎖とジアシルグリセロールがピロリン酸を介して縮合した構造をもつ。MPIaseが膜タンパク質の膜挿入活性をもつ要因を明らかにするために、その基本構造となる3糖(繰り返し回数=1)とピロリン脂質を縮合したmini-MPIase(1)を合成した。構築が難しいβマンノサミン構造については、初めにグルコースを縮合した後に2位の立体反転を伴ってアジド基を導入することで達成した。ピロリン酸の構築は、3糖リン酸と脂質のホスホアミダイトの縮合により行うことができた。グルコサミンの6位アセチル基が無い類縁体(6-OH体)も合成し、その膜挿入活性を比較した。mini-MPIase(1)を膜中に含有させて膜挿入活性を調べた場合、同重量の天然MPIaseの1/4程度の活性を示した。6-OH体の活性は著しく低下しており、6位アセチル基の重要性が確認できた。分子量を勘案すると、モルあたりの活性はまだかなり弱いが、3糖レベルでも確かな活性が観測できたことで、今後、合成MPIaseを用いた機構解析が可能であることが分かり、繰り返し回数が2~4回(6糖~12糖)の合成を開始することとした。溶液中にmini-MPIase(1)を加えた場合にも、濃度依存的な膜挿入活性が見られた。天然MPIase含有膜に対して、さらに溶液にmini-MPIase(1)を添加すると活性は増強された。この場合でも、6-OH体は活性が低下しており、6位アセチル基の重要性が示された。 これらの類縁体について、膜の流動性に与える影響を固体NMRでも測定した。 また、MPIase生合成酵素候補の基質と予想される糖ヌクレオチドを合成し、酵素反応に供したところ、予想どおりの反応物が得られ、生合成の第1段階である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定のMPIaseの基本構造となるmini-MPIase(1)の合成が達成できた。糖鎖が短いにもかかわらず、膜挿入活性が確認できたことで、合成品を用いて、固体NMRなどの機構解明研究が可能となった。 生合成酵素候補とその基質も同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖が長くなるに従って活性増強が期待できるため、3糖ユニットの縮合を行い、6糖、9糖の糖鎖とピロリン脂質を縮合した類縁体を合成する。合成を効率化するために、保護基や縮合条件の最適化を検討する。さらに、官能基の変換を行い、活性に必要な要因を明らかにする。 生合成酵素については、基質特異性を明らかにする。さらに、3糖ユニットの縮合酵素を同定する。
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