研究実績の概要 |
本研究では、生体内の代謝酵素に分解されず、かつオリジナルの糖鎖機能を細胞内で、保持・増幅できるポテンシャルを持つ「高次生物機能中分子」の創製を目指している。その鍵設計コンセプトは、当研究グループで見出したグリコシド結合のO原子をCHF基に置き換えるというシンプルなものである。しかし、これまでに天然型糖鎖の炭素連結型アナログを効率的に合成できる手法は限られており、さらにフッ素原子を導入した例はほとんどなかった。一方、当研究グループでは以前に、2,3-シアリルガラクトース構造の炭素連結型アナログの効率的な合成法を見出しているが、本手法を他の一般的な糖鎖構造に適用することは困難であった。そこで本研究では、生物学的に重要な糖鎖構造である2,6-シアリルガラクトース構造、およびGal-β(1,3)-GalNAc構造の炭素連結型アナログの合成法を開発することを目的としている。 本年度は、2,6-シアリルガラクトース構造を合成すべく、その前段階としてGlc-α(1,6)-Glc構造を有するイソマルトースの炭素連結型アナログ創製を検討した。効率的に2糖を炭素で連結するには、ドナー糖の1位と1炭素増炭したアクセプター糖をアトムトランスファー型のラジカルカップリングを実現することが望ましいと考えた。しかし、容易に合成できるグルコースのキサンテート体からのカップリング反応は全く進行しなかった。本原因を精査し、最終的に周辺保護基をチューニングすることで、中程度の収率で単純な末端オレフィンとのカップリング反応が進行することを見出した。さらに、糖骨格を有するアクセプター分子とのカップリングも進行することをごく最近確認した。今後、さらに条件を最適化し、2,6-シアリルガラクトース構造の炭素連結型アナログ合成に展開していく。
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