公募研究
スポラディックE層(Es層)は,短波を利用した通信や放送に影響を及ぼすことから社会貢献の観点においても重要度の高い電離圏擾乱現象であり,動態の解明や予測が求められている.本課題では,Es層の主成分イオンを構成する金属イオンの動態,及び金属イオンの予備軍である金属原子の動態に焦点をあて,特に,高エネルギー粒子に対する金属イオン・金属原子層の応答を観測的にあきらかにする.得られた観測的知見をベースにした化学的考察から多種の金属イオン層の応答推定を展開し,高エネルギー粒子に対する金属イオン層の動態変化を探っていく.これらを通じ,電離圏擾乱(Es層)の動態解明や予測研究に資することを目指す.本年度は,低軌道衛星による光学リム観測から得られた金属イオン・金属原子密度(Na, Mg, Mg+)のグローバルデータの収集を予定通りに行った.取得データの中で Na について統計解析を行い,初期結果を学術論文として査読誌に投稿した.Mg, Mg+ についても予定通り統計解析に着手している.更に,南極および北極における地上ライダー観測から得られた Na データの解析にも取組み,学術論文1編を含む研究成果が得られている.
1: 当初の計画以上に進展している
低軌道衛星観測による金属イオン・金属原子密度データの収集と解析が予定通りに進行していることに加え,当初の計画には含まれていなかった地上ライダー観測のデータ収集・解析への取組みにも着手しているため.
前年度に引き続き,収集した低軌道衛星観測による金属イオン・金属原子密度(Na, Mg, Mg+)のグローバルデータを詳細に解析し,高エネルギー粒子に対する応答をあきらかにしていく.並行して,地上ライダー観測データの収集・解析への取組みも継続する.データ解析結果より得られる観測的知見について順次学術論文としてまとめていく.同時に,観測的知見をベースに化学的考察から多種の金属イオン層の応答推定を展開していく.化学的考察に関しては,最新大気モデルの連携的活用など,多角的な調査への発展も視野に入れつつ,電離圏擾乱(Es層)の動態解明や予測研究に資するような将来計画への展開を目指していく.
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
J. Geophys. Res. Space Physics
巻: 122 ページ: 1212-1220
10.1002/2016JA023472