研究領域 | 太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成 |
研究課題/領域番号 |
16H01175
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木村 芳文 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (70169944)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁力線リコネクション / 地球双極子磁場 / ネットワークの脆弱性 / グラフ理論 / ネットワークの過渡的現象 |
研究実績の概要 |
本研究課題は太陽活動の周期性/間欠性における数理的構造とそこに存在するメカニズムを解明し,それらが地球環境に及ぼす影響を数理モデルを構築することによって理解し,予兆を察知し正確な予測に寄与することを目的とする.研究にあたっては, 現場との連携による衛星データのデータマイニングに基づき,2つの研究テーマ [a] 太陽活動における非線形現象の考察とモデルの構築 : (1) 渦と磁力線のリコネクションモデル, (2) 地球双極子磁場の摂動モデル [b] 太陽活動の地球環境への影響を示すための指標の考案:(1) 電力通信ネットワークのもつ脆弱性の指標のグラフ理論に基づく開発,(2) グラフダイナミカルシステムによるネットワークの過渡的現象についてモデル構築を図り,そこで得られたモデルの有効性を既存のモデルとの比較及び流体方程式・MHD方程式などの数値解析により実証することによって新たなデータ解析に生かすという研究サイクルの構築を目指す. 本年度は研究の初年度としてテーマ [a]のうち(1)の渦と磁力線のリコネクションモデルについて研究を進めた。 Cambridge大学のH.K. Moffatt教授との共同研究として渦のリコネクションのモデルを発展させ、Biot-Savart則を用いててリコネクションに関わる距離、速度、軸方向ストレッチングの時間スケーリングを数値的に明らかにした.これらのスケーリングはEuler方程式の特異性を特徴づけるものであり、渦リコネクションが流体方程式の特異性を解き明かす鍵になる可能性があることを示している.ここで得られた知見を磁力線のリコネクションに対応させることは非常に興味深い問題であると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した研究実施計画としては項目[a]の(1) 渦と磁力線のリコネクションモデルと項目[b]の(1)の電力通信ネットワークのもつ脆弱性の指標のグラフ理論に基づく開発、の2つを挙げた。これらのうち前者についてはEuler方程式の特異性の問題にからんで渦のリコネクションモデルの研究を進めて途中までの結果を発表した。特に渦リコネクションにおける特異性のスケーリング則をBiot-Savartモデルを用いて明らかにしたことは大きな成果に繋がる可能性があると思う。これを研究課題に即した磁力線のリコネクションの問題に適用することは今年度の課題であると言える。 一方、もう一つの項目[b]の(1) 電力通信ネットワークのもつ脆弱性の指標のグラフ理論に基づく開発については連携研究者の藤江双葉准教授との連携が思うように進まず大きな進展が得られなかった。ネットワークの脆弱性の指標作成は本研究課題の大きなテーマの一つであるので研究の推進を今後の課題としたい。以上の結果として区分を 「(3) やや遅れている。」とする。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べたように、これまでに項目[a] (1) の「渦と磁力線のリコネクションモデル」についてはある程度の結果を得ることができた。この結果を磁力線のリコネクションに適用するにあたり、まず最初にひずみ流のもとでの非平行配置の直線磁力線の問題から始め、速度場にローレンツ力の影響を考慮することによって考察を行う。さらに渦と磁力線が共存する問題についても議論を進める予定である。 一方ネットワークの脆弱性の指標作成は本研究課題の大きなテーマの一つであるが、研究がやや遅れているので連携研究者の藤江双葉准教授と大平徹教授との連携によってグラフの連結性に関する研究を有向グラフに対して発展させ、フロー付きグラフ理論によるモデル解析によってネットワークの過渡的現象に対する最適化問題を考察することによって研究を進める予定である。 本研究課題の期間は2年間であり、2年目として残された問題の整理と新たな研究内容の提案を行ないたいと考えている。
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