研究実績の概要 |
本研究課題は太陽活動の周期性/間欠性における数理的構造とそこに存在するメカニズムを解明し,それらが地球環境に及ぼす影響を数理モデルを構築することによって理解し,予兆を察知し正確な予測に寄与することを目的とする.研究にあたっては, 現場との連携による衛星データのデータマイニングに基づき,2つの研究テーマ [a] 太陽活動における非線形現象の考察とモデルの構築 : (1) 渦と磁力線のリコネクションモデル, (2) 地球双極子磁場の摂動モデル [b] 太陽活動の地球環境への影響を示すための指標の考案:(1) 電力通信ネットワークのもつ脆弱性の指標のグラフ理論に基づく開発,(2) グラフダイナミカルシステムによるネットワークの過渡的現象についてモデル構築を図り,そこで得られたモデルの有効性を既存のモデルとの比較及び流体方程式・MHD方程式などの数値解析により実証することによって新たなデータ解析に生かすという研究サイクルの構築を目指すものであった.. 本年度は最終年度として初年度の成果のうちテーマ [a](1)の渦と磁力線のリコネクションモデルについて研究をさらに進め、国際会議において発表を行い,論文を執筆した.具体的にはCambridge大学のH.K. Moffatt教授との共同研究として渦のリコネクションのモデルを発展させ、Biot-Savart則を用いててリコネクションに関わる距離、速度、軸方向ストレッチングの時間スケーリングを数値的に明らかにした.これらのスケーリングはEuler方程式の特異性を特徴づけるものと考えられ、渦リコネクションが流体方程式の特異性を解き明かす鍵になる可能性があることを示している.ここで得られた知見を磁力線のリコネクションに対応させることは非常に興味深い問題であると言える.
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