研究領域 | 太陽地球圏環境予測:我々が生きる宇宙の理解とその変動に対応する社会基盤の形成 |
研究課題/領域番号 |
16H01184
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
黒田 友二 気象庁気象研究所, 気候研究部, 室長 (80343888)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気候変動 / 海洋変動 / 太陽活動 / 対流圏成層圏結合 / 大気海洋相互作用 / 地球システムモデル |
研究実績の概要 |
本研究では観測された海洋および気象データと、計算機上で太陽黒点周期変動として想定される太陽放射等の変動で駆動した地球大気海洋の運動を模した精密なモデルによる数値実験から、太陽活動の海洋変動と気候への関係を明らかにすることを目的とする。その目的のため、平成28年度は下記の項目について研究を行った。 1、太陽活動指数F10.7を用いて、観測された全球の700メートル深度までの冬季における北太平洋および北大西洋域の海洋水温データに対するラグ単回帰解析を行った。まず、北太平洋域での海面水温(SST)について調べたところ、SSTパターンはかなり明瞭であり、太平洋十年規模変動(PDO)によく似たパターンが4年遅れてピークになる形で現れていた。変動の中心の一つである日本東方域で平均して深度とラグの関係を調べると、ラグ0年(太陽活動のピーク年)で正の信号のピークとなり、それがさらに2年ほどの遅れをもって海面から深部方向に伝搬していく様子が解析された。他方北大西洋域でのSSTパターンを調べると、それは弱いNAO的3極子変動であり、最北の作用中心で平均した深度とラグの関係は、負のピークが太陽活動のピークから2年遅れて現れ、それが深部に向かって3-4年遅れる形で伝搬していくことが分かった。 2、11年太陽黒点周期に対応した地上気温、海洋表面温度について、歴史的データ、および最近の気象再解析データを用いて調べた。その結果、海上においては大気と海洋の結合の強い、海洋前線帯で大気により強制された変化が増幅し記憶されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度立てた計画に従って、地球システムモデルの1,000年ランが完了し、観測データの解析およびモデルデータの解析も今のところ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、以下の項目について研究を推進する予定である。 1、地球システムモデルの過去再現の長期ランを解析することにより、太陽活動の海洋と気候に及ぼす影響について調べる。 2、これまでは、太陽活動の影響について、活動に比例した大気の変動について調べてきたが、さらに大気―海洋の相互作用により生ずる非線形の応答について調べる。 3、太陽活動の海洋と気候への影響についての研究成果についてまとめる。
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