公募研究
低分子量G蛋白質Rabは真核生物に普遍的に保存された膜(小胞)輸送の制御因子で、ヒトなどでは60種類以上の異なるRab分子が存在し、様々なタイプの膜輸送を制御している。ダイナミックな膜動態を伴うオートファジー(自食)も例外ではなく、近年複数のRab分子やそれらの制御因子のオートファジーへの関与が報告されている。しかし、Rabの種類数が非常に多いこともあり、Rabによるオートファジー制御の仕組みは未だ不明な点が多い。当研究室ではこれまで、哺乳動物に存在する全てのRabをシステマティックに解析可能なツールを駆使して、Rabによるオートファジーのダイナミックな膜動態の制御機構の解明に取り組んで来た。本研究では、栄養状態に依存したオートファゴソームとリソソームの融合過程、すなわちオートファゴソームの成熟過程に関与する新規Rab分子に焦点を当て、その分子機構の解明に取り組んだ。本年度は、ショウジョウバエの幼虫から成虫への変態期において、筋細胞内で起こる筋線維やT管の再構成過程にオートファジーが必須の役割を果たすことを初めて明らかにした(eLIfe, 2017)。また、この過程を制御する新規因子のスクリーニングを行い、Rab2を同定することにも成功した。興味深いことに、Rab2を欠損させたハエでは、筋細胞内の再編成が正しく行われず、細胞内にオートファゴソームが蓄積していた。詳細な解析の結果、Rab2はショウジョウバエだけでなく哺乳動物の細胞においても、繋留因子として知られるHOPS複合体及びシンタキシン17を含むSNARE複合体との相互作用を介して、栄養条件下でオートファゴソームとリソソームの融合過程に関与することを突き止めた。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、ショウジョウバエの変態期に筋線維やT管の再構成が起こること、この際オートファジーが必須の役割を果たすことを明らかにした。また、栄養条件下でオートファジーとリソソームの融合を制御する新規因子として低分子量G蛋白質・Rab2の同定に成功するなど、期待以上の成果を挙げることができた。
今後も引き続き、新たなRabノックアウト細胞株を作製し、飢餓により誘導されるオートファジー、特にオートファゴソームとリソソームの融合過程を制御するRabの同定を進めて行きたい。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
eLife
巻: 6 ページ: e23367
10.7554/eLife.23367
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Dojin Bioscience Series 24 「メンブレントラフィック」
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http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/teacher/t_fukuda/