Nrf2は多くの下流遺伝子の発現を制御する転写因子である。Nrf2の活性はユビキチンリガーゼアダプター分子であるKeap1によって負に制御されている。Keap1に結合したNrf2は、ユビキチン化されてタンパク質分解を受ける。タンパク質分解機構のひとつとして、プロテアソームと並んでオートファジーが知られている。我々はこれまでに、Keap1タンパク質がオートファジーによって分解されることを明らかにしている。肝臓においてオートファジーの機能が破綻すると、本来分解されるべきp62タンパク質やユビキチン化タンパク質が異常蓄積する。p62はKeap1とNrf2の結合を妨げるため、オートファジーの機能が破綻した肝臓ではNrf2が活性化する。オートファジーの機能が破綻したマウス肝臓は、肝腫瘍を形成する。この肝腫瘍の形成には、オートファジーの破綻により活性化したNrf2が関与することを示した。Nrf2の活性は主にKeap1によって制御されているが、二次的なNrf2の制御系として、リン酸化されたNrf2がbTrCPによってユビキチン化を受けることが最近報告された。そこで、オートファジーの機能が破綻したマウスの肝臓において、Nrf2のリン酸化に関わるシグナルカスケードとしてAktのリン酸化を調べたところ、オートファジーの破綻によりAktのリン酸化が亢進していることが明らかとなった。よって、オートファジーの機能が破綻した際におこるNrf2の活性化メカニズムとして、p62タンパク質の蓄積に加えて、AktシグナルカスケードによるNrf2リン酸化の抑制によるNrf2タンパク質分解の抑制が考えられた。
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