研究実績の概要 |
線虫受精卵においては精子に由来するミトコンドリア等の父性オルガネラがオートファジーにより選択的に消去され,この現象はアロファジーと呼ばれている.われわれはアロファジーを制御する因子の探索から,ALLO-1とIKKE-1という二つの因子を同定し,詳しい機能解析を行ってきた.ALLO-1はオートファジーアダプターとして働く新規因子で,父性ミトコンドリア周囲にオートファジー関連因子を局在化させるために必須であった.また,IKKE-1は哺乳類のTBK1やIKKepsilonに相同性を示すキナーゼで,ALLO-1と物理的に相互作用した.また,キナーゼドメインの変異体はikke-1変異体を相補できないことから,キナーゼ活性がアロファジーに必須であることが明らかとなった.さらに,生化学的な解析から,ALLO-1がリン酸化タンパク質であること,このリン酸化の一部はIKKE-1に依存することを見出した.また,受精卵から回収したGFP-ALLO-1の質量分析からリン酸化部位の同定にも成功し,この部位のリン酸化がALLO-1の機能に重要であることを示した.これらの結果は哺乳類TBK1による選択的オートファジー経路の制御メカニズムと類似性があり,TBK1ファミリーキナーゼによる制御は選択的オートファジー経路の共通原理である可能性が示唆された.これらの成果は本年度原著論文として発表した(Sato, et al, Nature Cell Biology 2018).一方で,本研究で同定したALLO-1上のリン酸化部位以外にもIKKE-1のリン酸化基質が存在する可能性を示す結果も得たため,プロテオミクスによりikke-1変異体でリン酸化レベルが低下するププチドの同定を試みている.
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