研究実績の概要 |
WDR45異常を原因とするSENDA / BPANはオートファジー関連神経変性疾患である。本研究ではSENDA / BPAN患者から樹立した多能性幹細胞(疾患iPS細胞)によりオートファジー機能不全が神経細胞傷害をもたらす機構を解明することを目指した。 1)疾患iPS細胞の神経細胞への分化誘導 線維芽細胞を代用して、同様の解析を進めた。 2)細胞の傷害性 細胞傷害性の評価方法としてLDH測定(Cell 2006)が利用されているため、細胞上清中のLDHを測定した。患者由来のLDHは健常者の150% の増加を示した。 3)オートファジー機能への影響 患者由来細胞株と健常者由来のオートファジー活性を測定したところ、飢餓刺激下で活性変動に差を認め活性の変化率が健常者で高値となった。 4)脳組織の病理学的解析 患者剖検脳検体から脳領域(黒質、淡蒼球、前頭皮質、視床、小脳)別に抽出したRNAやタンパクを利用してオートファジー関連分子の発現解析を実施した。 WIPI-4およびそのアイソフォームであるWIPI-1,2,3のRNA発現をqRT-PCRにて測定し、どの領域においてもWIPI-2についでWIPI-4の発現は優位であることが判明した。実際に病変が強いと考えられる黒質や淡蒼球においてもその優位性は同様であった。しかしながら、オートファジー基質であるp62は黒質や淡蒼球では優位に増加しており、オートファジー活性に影響が生じていることが示唆された。タンパクレベルにおける解析ではWIPI-4抗体での検出ができなかっため、有効な抗体が必要である。脳組織検体での免疫染色ではオートファジー活性への影響の存在が確認された。 これらの検討はこれまでのオートファジー研究あるいは病態解析においては進んでない点であり、今後の研究のための重要な知見の基盤となった(投稿準備中)。
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