細胞内の多くのタンパク質は損傷・寿命・不要化すると分解酵素を含むリソソーム内へ最終的に輸送され分解される。そのためリソソームへの輸送が阻害されると、不良タンパク質の蓄積が引き起こされ、多様な疾患の原因となりうる。リソソームへ輸送される輸送経路は複数あり、基質はオートファジーやエンドサイトーシス、ゴルジ体によって形成される小胞などの膜構造体が利用される。Crinophagyは分泌顆粒小胞をリソソームへ輸送する経路であり、細胞膜へ標的化されていた分泌ホルモンを含有する分泌顆粒膜が輸送経路の運命を切り替え、リソソームへと膜輸送される経路であるが、その分子メカニズムは明らかとなっていない。リソソームへの輸送メカニズムを明らかにするため、前年度に開発したリソソームアッセイ法とcrinophagyアッセイ法を用いて哺乳類培養細胞におけるリソソーム輸送のメカニズムを調べた。その結果、それぞれの輸送に関わるシグナル経路を見出した。 リソソームの活性化と不活性化に関わる経路が複数示唆されたため、まずはそれぞれの経路に共通する関連因子を絞り込み、これまで知られていない経路の詳細を調べた。特にリソソームの活性化経路には転写因子TFEBが大きく関与することが知られているが、我々の結果はTFEB非依存的な経路があることを示唆した。またペプチドホルモンがリソソームへ輸送される経路には2種類あることがわかり、分泌顆粒を介さずにゴルジ体から直接リソソームへ輸送される経路と、分泌顆粒からcrinophagyによってリソソームへ運ばれる経路がストレスに応じて使い分けされている知見を得た。この発見と開発したcrinophagyアッセイ法は、今後ペプチドホルモンの品質管理システムを明らかにする上での有用な情報となり得る。
|