研究領域 | オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで |
研究課題/領域番号 |
16H01196
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒川 峰夫 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80312320)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 白血病幹細胞 / gene expression profile / signaling pathway / cytokine |
研究実績の概要 |
オートファジーが治療標的となり得るかどうか検証を行った。白血病モデルマウスにおいて、既存の白血病治療薬であるシタラビン投与は白血病幹細胞を減少させるとともにオートファジーを活性化させており、Atg7をノックアウトしオートファジー活性を落とすことで相加的な白血病幹細胞の減少効果を得られることを見出した。また、白血病モデルマウスにおいて末梢血中の白血病細胞が骨髄中の白血病細胞に比してオートファジー活性が高く、かつ生存がオートファジーに依存的であることを示し、骨髄微小環境中におけるオートファジーを代替する機構の存在が示唆された。次に、オートファジーが白血病幹細胞維持に寄与する分子メカニズムの解明のため、オートファジー関連分子のmRNA発現を網羅的に調査したが、これまでのところ白血病幹細胞において特異的に増加している遺伝子を同定できなかった。また、オートファジーを誘導する既知のシグナル伝達経路についてリン酸化蛋白の発現を調査し、p38MAPKといった一部のシグナル伝達経路が白血病幹細胞において抑制されていることを見出し、これがオートファジー活性の増加に寄与している可能性が示唆された。最後に、骨髄中のサイトカイン濃度を網羅的に測定したところ、オートファジー欠損白血病モデルにおいてはIFNgやTNFa、IL-6、IL-9、IL-10といった各種サイトカインの濃度上昇を認め、その意義について現在探索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジーが白血病幹細胞の維持において果たす役割について、mRNA、既知のシグナル伝達経路について解析を行い、白血病幹細胞におけるオートファジー活性化に関与している可能性のあるシグナル伝達経路の候補が得られた。また、白血病マウスモデルにおいて、オートファジー欠損によって骨髄内で濃度が上昇するサイトカインが複数同定された。その他にも、既存の白血病治療薬であるシタラビン投与は白血病幹細胞を減少させるとともにオートファジーを活性化させ、Atg7欠損と組み合わせることで相加的な白血病幹細胞の減少効果を得られることを見出し、オートファジー機構が治療標的になりうるかについても検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄微小環境におけるオートファジーの役割については未解明であり、今後、骨髄微小環境におけるオートファジー欠損マウスモデルを用いて新たな白血病幹細胞維持機構の解明を目指す。また、正常造血幹細胞や筋組織などにおける幹細胞性の維持において、ミトコンドリア除去による酸化ストレス逓減が重要であるという知見が得られており、白血病幹細胞において酸素消費速度やメタボローム解析をはじめとした細胞内の代謝状態に関する解析を行うことで、白血病幹細胞の維持においてオートファジーが果たす機能的役割を解明する。また、前年度に得られたオートファジー欠損によって上昇したサイトカインが白血病幹細胞維持において果たしている役割を探索する。
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