研究領域 | オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで |
研究課題/領域番号 |
16H01197
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堀江 朋子 (川俣朋子) 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70435527)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / 核酸 / RNA / 液胞 / RNase / RNA分解 / ゼブラフィッシュ / リソソーム |
研究実績の概要 |
RNA はリン酸と糖、塩基からなるヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で連結した生体高分子であり、rRNA、tRNA、mRNA やノンコーディングRNA など、多種多様な構造・機能をもつRNA が存在する。代表者は細胞質内にリボソーム構成成分として存在するRNA、rRNA が飢餓条件下でオートファジーにより分解されることを示すことに成功し、オートファジーは細胞内のタンパク質分解系であるとともに、主要なRNA 分解系でもあることをこれまで明らかにしてきた。 本研究課題では、オートファジーによるRNA分解機構についての全容解明に向けて、まず進化的に保存された液胞/ リソソームに局在するRNase であるRny1/Rnaset2 に着目し、生化学と生理学の両面から解析を行うこととした。初年度は、最初に酵母Rny1に着目し、単離液胞や精製したRny1と基質RNAを用いたin vitro RNA分解系を構築し、Rny1の輸送経路、至適pH、基質特異性、酵素の活性化・阻害機構等の生化学的特性を調べた。またRny1を酵母から高度に精製し、相互作用する因子を質量分析により同定する実験を行った。 また、共同研究で連携研究者とゼブラフィッシュの解析を進めた。Rny1のホモログであるRnaset2を欠失したゼブラフィッシュ個体をCRISPRシステムを利用して作成しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵母Rny1の生化学的解析は順調に進展し、精製したRny1単独でATP非依存的にモノヌクレオチドを生じることを in vitroで確認できた。その際、塩基配列の特異性、または塩基そのものの特異性が多少ある可能性が示唆された。塩基配列の特異性があるとRNAの完全分解が阻害され、未分解のRNAが液胞内に蓄積してしまう可能性がある。メタボローム解析からは、RNA分解の結果生じる塩基(4種類)について、それぞれほぼ同じ量を検出できていたことから、Rny1と協調して働く因子が、RNA分解を補助している可能性がある。Rny1と結合する因子の同定を免疫沈降法で試みたが、これまで特異的な結合因子は確認できていない。そこで液胞成分の入れ戻し実験を行い、RNaseの活性を指標にRny1の機能を補強するアクセサリー因子(ヘリケースなど)の同定を試みることを次年度予定している。
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今後の研究の推進方策 |
酵母Rny1については、RNaseの活性を指標にRny1の機能を補強するアクセサリー因子(ヘリケースなど)の同定を試みることを計画している。また脊椎動物におけるRNA分解機構を解明するためRNaseT2ゼブラフィッシュ欠損変異体の作成を完了させ、その表現型を細胞、組織、器官、および個体レベルで解析を進める予定である。
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