研究領域 | オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで |
研究課題/領域番号 |
16H01200
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阪井 康能 京都大学, 農学研究科, 教授 (60202082)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / ミクロオートファジー / 液胞 / 脂肪滴 |
研究実績の概要 |
本研究課題においては、酵母におけるミクロオートファジーと総称されるオートファジー経路群について統一的理解を進めることを目的とし、そのなかでも特に脂肪滴の分解機構のひとつであるミクロリポファジーの分子機構の詳細を明らかにすることを目指している。またミクロオートファジーを誘導する生理的条件や、誘導に至るシグナル伝達経路を明らかにすることも目的としている。 ミクロオートファジーはリソソーム(液胞)膜の内腔への陥入を伴う輸送機構であるため、その過程で液胞膜タンパク質が内腔へ運ばれることが考えられる。本年度の申請研究によって、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae の複数の液胞膜タンパク質(Vph1,Pho8)と蛍光タンパク質との融合タンパク質を生化学的に検出することにより、ミクロオートファジーの活性を測定する実験系を構築した。構築した実験系を出芽酵母の様々な変異株にたいして適用することにより、ミクロオートファジーが多胞体(multivesicular body)形成と同様の分子機構を用いること、一方で新生膜の形成を伴うオートファジー(マクロオートファジー)において機能する分子群であるAtgタンパク質群は関与しないことを明らかにした。 メタノール資化性酵母Pichia pastoris はメタノール培養の後、グルコース培地に移すことでミクロオートファジーによるペルオキシソーム分解を誘導する。本酵母においてメタノールを検知する機構の1つとしてWscファミリータンパク質があること、また本タンパク質がメタノール存在時にペルオキシソーム分解を抑制する機能を持つことを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究において当初目的としていた、ミクロオートファジーの活性を査定する実験手法の開発に成功したことは、大きな進展であるといえる。従来、ミクロオートファジーの誘導、活性の検知は、顕微鏡観察におけるリソソーム(液胞)膜の変形から類推するか、あるいはターゲットとなるオルガネラ(細胞質やペルオキシソームなど)の液胞内取り込みを生化学的に調べるしか方法がなかったが、この手法ではマクロオートファジーなど、他のオートファジー経路によるオルガネラ取り込みも含めた活性を検出していた。新たに開発した方法は、様々なオルガネラをターゲットとするミクロオートファジーの活性を、マクロオートファジーと区別して測定できることから、より精緻な評価を可能にする手法と言える。
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今後の研究の推進方策 |
液胞膜タンパク質を指標としたミクロオートファジー機能分子探索により、多胞体形成の分子機構の重要性が明らかとなったことから、本分子機構が脂肪滴を対象としたミクロオートファジーにも寄与するのかどうかを調べる。また、多胞体に取り込まれるタンパク質はあらかじめユビキチン化により標識されていることが知られているが、ミクロオートファジーにおいても液胞膜タンパク質が同様のユビキチン化標識を受けるのかについては、これまで知見がないので、ユビキチン化酵素の変異株作成や変異型ユビキチンの過剰発現など通じて、ミクロオートファジーに機能するユビキチン標識分子機構を調べる。 メタノール資化性酵母のペルオキシソーム分解抑制に関しては、本分解機構の鍵となるペルオキシソーム上のアダプタータンパク質、Atg30のリン酸化状態に着目した研究を進める。本タンパク質はペルオキシソームとAtgタンパク質とをつなげる機能をリン酸化に依存して発揮するため、そのリン酸化レベル抑制がペルオキシソーム分解につながると考えられる。そこでWscファミリータンパク質の欠損により、Atg30のリン酸化状態が変化するかどうかを調べる。
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