研究領域 | オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで |
研究課題/領域番号 |
16H01203
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡本 浩二 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (40455217)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / オートファジー / オルガネラ形態制御 / 脂質輸送 / 出芽酵母 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、ミトコンドリア特異的オートファジー(マイトファジー)に重要な新規因子として、ミトコンドリア外膜タンパク質Om14を見出した。興味深いことに、Om14欠損細胞ではマイトファジー誘導時に起こるミトコンドリアの断片化が強く抑制され、マイトファジーの効率も部分的に低下する。本研究では、Om14とその相互作用因子がいつ・どこで・どのように、マイトファジーを促進するためのミトコンドリアの断片化を制御しているかについて、明らかにすることを目的とする。
平成28年度においては、ウェスタン解析のためのHAタグをOm14に付加した発現系の確立を試みた。その結果、N末端やC末端へのダギングはOm14のミトコンドリア断片化機能を損なうことがわかった。Om14は3つの膜貫通ドメイン(TMD)をもつと予測されているタンパク質である。そこで、N末端側から1番目と2番目のTMD、および2番目と3番目のTMDの間のループ部分にHAタグを挿入したところ、後者のタギングでOm14の機能が保持されることを見出した。一方、内在性プロモーターおよびターミネーター部分を含むOM14遺伝子発現カセットをプラスミドにクローニングし、これをOm14欠損細胞に導入したが、ミトコンドリア断片化機能は回復しなかった。このため、プラスミド発現系ではなく、染色体上のOM14遺伝子座にノックインする手法を確立し、野生型タンパク質と同様の機能をもつOm14-HA発現株を構築した。さらに、マイトファジー誘導前後のOm14-HAの発現パターンをウェスタン解析で調べたところ、誘導前の発酵性培養時に比べ、誘導後の非発酵性培養時には発現量が10-20倍増加していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析により、Om14の2番目と3番目のTMDの間のループ部分でタンパク質の機能を損なうことなくHAタグを付加できることが明らかとなった。また、プラスミド発現系ではom14欠損変異体のミトコンドリア断片化不全を相補できないこと、その解決策として染色体OM14遺伝子座へのノックインが有効であることを見出した。これらの改善策を実行するため、当初予定していたリン酸化部位変異体の解析や細胞内局在イメージングなどの実験は次年度の計画として行うこととなった。一方、ノックインOm14-HA発現株を用いて、Om14のトポロジーアッセイの再検討を試みた。具体的には、Om14-HA発現株よりミトコンドリアを単離し、これにAlexa488蛍光色素結合HA抗体を加えて蛍光抗体のミトコンドリアへの結合をマイクロプレートリーダーで検出した。その結果、HAタグ挿入部位はミトコンドリアの外側に露出していること、N末端は外側、C末端はミトコンドリア膜間スペースに露出したトポロジーをとることが示唆された。さらに、OM14遺伝子に含まれる一つのイントロンの重要性について調べるため、イントロンを持たないOM14(-intron)-HAを染色体OM14遺伝子座へノックインし、タンパク質発現パターン・ミトコンドリア断片化・マイトファジーを解析した。その結果、イントロンそのものはOm14の機能発現に必ずしも重要ではないことが明らかとなった。
このように、当初予定していた実験の代わりに、今後の解析に重要な実験系を確立できただけでなく、タンパク質のトポロジーとイントロンについて新たな知見も得ることができたことから、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、(1)Om14-HA発現株から単離したミトコンドリア濃縮画分を可溶化し、その中に含まれるOm14-HAとその相互作用タンパク質をHA抗体結合アガロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製、質量分析にて同定する。(2)免疫共沈降アッセイを用いて、得られた候補因子とOm14-HAとの相互作用を確認する。(3)相互作用が確認された因子の欠損変異体を作成し、マイトファジー誘導時のミトコンドリアの形態変化とマイトファジーへの影響を調べる。(4)Om14-HA発現株から単離したミトコンドリア濃縮画分をブルーネイティブゲル電気泳動法/ウェスタンブロッティングを用いて解析し、Om14-HAが高分子量複合体を形成しているかどうか調べる。(5)同様の方法でOm14相互作用因子の高分子量複合体形成を解析するとともに、相互作用因子の欠損変異体から単離したミトコンドリア濃縮画分におけるOm14-HAの高分子量複合体形成を調べる。
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