研究実績の概要 |
オートファジーは、真核生物に広く存在する生物現象であり、その機能は生命の基本過程に広く関与することが明らかにされている。しかし一部の例は全ての生物における機能の代表ではない。そこで本研究では初期に分化し、ヒト腸管内の嫌気環境に適応した寄生性原虫赤痢アメーバを用い、Atg8の関与する分子過程の解明し、オートファジーの普遍性と多様性を明らかにしたい。 1)Atg8の貪食胞成熟における機能の解明-貪食胞のプロテオーム解析-:Atg8遺伝子発現抑制株と親株からヒト血清コートしたマグネティックビーズを取り込んだ貪食胞を精製し質量分析にかけ、Atg8遺伝子発現抑制株で動員が減少している分子群を同定した。2回の試行から1.5倍以上変化した127タンパク質を見いだした。2)Atg8と赤痢アメーバ代謝系の関与の解明:以前の研究から赤痢アメーバAtg8が解糖系酵素と結合する可能性が示されている。そこでructose1,6-bisphosphate aldolase(ALDO), triose phosphate isomerase (TPI)のタグ融合タンパク質発現株を作成し、Atg8との結合を確認した。さらにグルコース除去条件下、野生型ではALDO, TPI共に活性が60%程度に低下するが、Atg8gs株ではTPIの活性低下が観察されなかった。Atg8による解糖系制御の存在が示唆された。3)Atg8脂質修飾制御機構の解明:Atg5-12複合体構成分子候補の遺伝子発現抑制株を作成したところ、いくつかの遺伝子でAtg8の脂質修飾が変化することが確認された。4)赤痢アメーバにおけるストレス誘導性オートファジーの検討:GFP-Atg8株を用いてストレス誘導性オートファジーが赤痢アメーバに存在するのか、画像解析で検討した。Tor阻害剤の効果を検討したが、再現性を得るための条件検討が必要である。
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