公募研究
受精前の卵は分化した細胞であるが、受精後の1細胞期胚は全能性を獲得し、あらゆる種類の細胞へと分化できる能力を有するようになる。この受精前後における分化・全能性の変化を調節する機構はこれまでほとんど明らかにされていない。本研究においては、全能性の獲得機構が受精後にすべて突然に機能し始めるのではなく、受精前の卵においてすでに何らかの準備がなされているのではないかという仮説の下に、これを検証するための実験を行うことにした。前年までに結果で、全能性を持つ1細胞期胚の特徴である緩んだクロマチン構造が成長期の卵でも見られ、クロマチン構造を緩める働きをもつChd9がこの時期の卵で高いレベルで発現していることを明らかにした。そこで本年度はChd9をノックダウン(KD)することでこの遺伝子が成長期卵での緩いクロマチン構造に関与しているかを確かめることにした。その結果、Chd9のKDによりクロマチン構造が締まることが明らかとなり、Chd9による卵でのクロマチン構造の緩みが全能性獲得の準備となっていることが示唆された。また、リンカーヒストンH1の変異体であるH1fooは卵で高発現しており、さらにクロマチン構造を緩める働きがあることが知られていることから、このタンパク質の卵での働きが全能性獲得に関与していることを考え、成長卵においてH1fooのKDを行った。その結果、減数分裂は正常に進行するが、受精後の1細胞期に発生が停止した。この結果は、H1fooも成長期の卵において全能性獲得の準備に関与している可能性を示すものである。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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