研究領域 | 生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御 |
研究課題/領域番号 |
16H01220
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
奥田 晶彦 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60201993)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 減数分裂 / Max / PRC1 |
研究実績の概要 |
配偶子形成は子孫を維持するする為に極めて重要であることは言うまでもなく、またその配偶子形成の為には極めて複雑で、かつ、多数のステップを経る必要がある。それら配偶子形成の為の様々なステップは一般的に進化の過程でよく保存されている。減数分裂は、配偶子形成過程における極めて重要なステップの一つであり、この減数分裂を司る分子機構に関しても種を超えて保存されているという点においては例外ではない。但し、減数分裂の開始機構、すなわち、生殖細胞における体細胞分裂からの減数分裂への切り替えを司る分子機構に関しては種間であまり保存性が認められず、それ故、哺乳動物における減数分裂開始機構に関しては、現状では、そこにレチノイン酸が関わっているであろうことを除いてほとんどわかっていない。但し、私たちは、偶然、c-MYC転写因子が機能する上で必須なパートナー因子として専ら認知されているMAXタンパク質が減数分裂の開始に対する強力な抑制因子であり、生殖細胞が減数分裂を開始するためにはMAXタンパク質の量が減ることが必要であり、かつ、そのMAXタンパク質の量の低下による減数分裂の惹起は、c-MYC転写因子の機能低下とは直接的には関係がなく、MAXタンパク質をサブユニットの一つとして持つ非典型的PRC1(PRC1.6)複合体の機能低下の結果を反映していることを明らかにした。そして、本研究プロジェクトでは、雄雌の始原生殖細胞における減数分裂の有無の違いがMAXタンパク質の量の差で説明できるか否かをMax遺伝子のコンディショナルノックアウト及びトランスジェーニックマウスを用いて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、MAXタンパク質をサブユニットの一つとして持つPRC1.6の機能破綻が減数分裂の開始に必要であり、かつ、MAXタンパク質の消失に伴ったMycの活性の喪失も、間接的ではあるが、減数分裂の効率を上げることに大いに貢献していることを明らかにした。かつ、胎生中期の雌の始原生殖細胞や、雄の精巣の中の精母細胞における生理的な減数分裂において、MAXタンパク質の量が顕著に低下していることを見出した。かつ、Max遺伝子の発現は、やはり減数分裂に先立って低下するものの、タンパク質でみられる顕著な現象を全て説明できるほどのものではなく、約50%程度の減少であり、それ故、MAXタンパク質の減数分裂とカップルした翻訳後の制御機構の存在が示唆された。また、遺伝子改変技術を用いて、本来減数分裂を起こさない雄の始原生殖細胞で特異的にMax遺伝子をノックアウトしたり、逆に、生理的に減数分裂を起こす雌の始原生殖細胞で特異的にMax遺伝子を過剰発現させるためのマウスの準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
哺乳動物では雄雌の違いで、減数分裂の場が異なり、発生中期の雌の始原生殖細胞では減数分裂が起きるが、雄の始原生殖細胞では起こらず、生後、精巣で始まるが、その違いがMAXタンパク質の量の差で説明できるか否かを、まず、雄のマウスの始原生殖細胞において、MaxコンディショナルノックアウトマウスとOct3/4のdistal enhancer の制御下にあるCreER融合遺伝子を有するトランスジェーニックマウスとの掛け合わせにより、雄の始原生殖細胞においてMax遺伝子をノックアウトし、その結果、減数分裂が惹起されるか否か、免疫染色、RNA解析等で検討する。逆に、Rosa26遺伝子座においてCreリコンビナーゼが作用すると、GFP遺伝子の代わりにMax遺伝子が発現するようになるマウスと、上記と同じOct-3/4-CreERトランスジェーニックマウスを掛け合わせることにより、雌の始原生殖細胞においてMax遺伝子を過剰発現した場合、減数分裂が起こらないようになるか否かを検討する。また、MAXタンパク質の翻訳後における制御に関して、生殖細胞で発現しているE3リガーゼの関与の可能性について検討する。
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