研究領域 | 生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御 |
研究課題/領域番号 |
16H01221
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石黒 啓一郎 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (30508114)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 減数分裂 / 生殖細胞 / 染色体 / クロマチン / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
(1)体細胞型増殖から減数分裂への切替えに伴うエピゲノム構造変換の解明 減数分裂に特異的なREC8型およびRAD21Lコヒーシンは、第一分裂を通じて染色体のaxis構造や二価染色体の形成、姉妹動原体の接着制御など染色体動態の様々な重要な局面で機能する。pre-meiotic S期は、減数分裂仕様の染色体再構成が起こる最も早い時期と推定され、体細胞増殖から減数分裂へと切替わるタイミングとも概ね符合する。本研究ではpre-meiotic S期をGFP陽性細胞として分離できるマウス系統を樹立した。これを用いて、生殖細胞のpre-meiotic S期のクロマチン結合因子を質量分析で同定する系を確立した。またpre-meiotic S期において体細胞型コヒーシンと入れ替わるように減数分裂型コヒーシンのローディングが開始されることが分かっている。本研究では、pre-meiotic S期前後に相当するクロマチン画分より減数分裂型コヒーシンの精製を行って、それと会合する新規のエピゲノム因子の同定を行った。 (2) 減数分裂型細胞周期の制御によるmeiotic prophaseのエピゲノム構造変換 APC複合体と呼ばれるE3ユビキチンリガーゼは基質認識・調節サブユニット(Cdh1,Cdc20)を変えることにより、細胞周期のG2期からM期の進行に重要な基質を分解へと導く。本研究では内在性APC2遺伝子座へ3xFLAG-HAタグを導入したノックインマウスの作製を行って、APC複合体を精母細胞より精製して、LC-MS解析によりG2期に相当する減数第一分裂meiotic prophaseにおける基質を網羅的に同定することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではpre-meiotic S期を分離できるようにデザインされたノックインマウス系統を樹立することに成功した。まずこの系が想定通りに機能するか否かを確かめるため、ノックインマウスの精巣を分離して、クロマチン画分からのpre-meiotic S期のクロマチン結合タンパク質の精製を行った。その結果、これに会合する因子が複数同定されることが判明し、このノックインマウス系統はpre-meiotic S期のクロマチン因子の網羅的同定に向けたツールとして有効であることが確かめられた。またクロマチン画分よりRAD21LおよびREC8に対する抗体のaffnity精製によって減数分裂型コヒーシンの精製とLC-MS解析を行って、それらと会合する新規のエピゲノム因子の同定を試みた。この実験では非特異的な結合因子が相当数混在するため、候補因子に対する抗体を作製して、真の相互作用因子の同定に向けたスクリーニングを開始した。またインスレーター因子CTCFのパラログであるBORISの相互作用因子を同定するために、クロマチン画分よりBORIS抗体によるaffnity精製および内在性BORIS遺伝子座へ3xFLAG-HAタグを導入したノックインマウスの作製を開始した。 また内在性APC2遺伝子座へ3xFLAG-HAタグを導入したノックインマウスの作製を行った。このノックインマウスの精母細胞よりAPC複合体を精製して、LC-MS解析によりG2期に相当する減数第一分裂meiotic prophaseにおける基質を網羅的に同定することを試みた。その結果、複数の会合因子が同定され想定通りに機能するツールとして有効であることが確かめられた。
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今後の研究の推進方策 |
pre-meiotic S期のクロマチン結合因子と相互作用する因子や減数分裂型コヒーシンRAD21LおよびREC8に会合する因子が複数同定されたため、引き続きpre-meiotic S期のクロマチン因子の網羅的同定を進める。その際に、抗体を作製してChIP-seqおよび免疫染色によりクロマチン上の局在を明らかにする。また新規の因子についてはKOマウスの作製を行って減数分裂時における表現型の解析を行う。 BORISおよびCTCFに対する力価の高い抗体の作製を行って、ChIP-seqおよび免疫染色により生殖細胞におけるそれらの標的配列、発現時期の違いについて検討を行う。また内在性BORIS遺伝子座へ3xFLAG-HAタグを導入したノックインマウスの作製を行って、BORIS相互作用因子の同定を進める。 またLC-MS解析により同定されたAPC複合体の基質について、抗体の作製により染色体上の局在について検討を行う。またそれらのKOマウスを作製して、♂♀生殖細胞の減数第一分裂meiotic prophaseにおける役割を検討する。
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