公募研究
1. PRDM14による’潜在的’多能性獲得機構の解明ES細胞をエピブラスト様細胞(EpiLC)に分化誘導後に転写因子PRDM14を発現させると、ES細胞への脱分化が誘導される。この条件でPRDM14のChIP-seqを行ったところ、転写因子TFAP2Cの認識配列の濃縮が観察された。そこで、Tfap2cノックアウトES細胞を作製し、PRDM14による多能性誘導におけるTFAP2Cの機能解析を行った。その結果、TFAP2CはPRDM14による多能性誘導には関与しないが、予想外なことに生殖細胞特異的遺伝子群の発現誘導に必要であることを明らかにした。2. PRDM14による「多能性獲得・維持」とBLIMP1による「多能性の潜在下」EpiLCにPRDM14を発現誘導させ浮遊培養するとES細胞へ脱分化し、接着培養すると始原生殖細胞(PGC)へと分化する。この2条件での遺伝子発現を比較したところ、浮遊培養時のみでPGC形成に重要な遺伝子、BLIMP1の発現誘導が観察された。そこで、接着培養時にPRDM14とBLIMP1を共発現させたところ、BLIMP1及びDPPA3陽性のPGCを大量に誘導することに成功した。3. PGCのエピゲノムリプログラミング原理に基づいた細胞初期化法の開発H3K9の脱メチル化とPRDM14の発現誘導を組み合わせることで、初期化に抵抗性を示す遺伝子群の発現を誘導できることを示していた。昨年度は、H3K9の脱メチル化とPRDM14の発現誘導による細胞初期化の可能性を検証するために、初期化が不完全なpre-iPS細胞でG9aをノックアウトし、かつPRDM14を誘導発現できる細胞の樹立を行った。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は主に仮説検証に必要な細胞樹立に費やし、仮説を裏付ける、もしくは予想外な結果を得ている。最終年度である今年度は、昨年度樹立した細胞株を利用し研究目的の達成を目指す。
1. PRDM14による始原生殖細胞誘導機構の解明昨年度までに、PRDM14によるPGC特異的遺伝子の発現誘導にDnmt3bの発現抑制とTFAP2Cの発現誘導が関与していることを示している。今年度は、ES細胞からPGCLCへの分化誘導系でDNMT3Bを過剰発現させる、またはTFAP2CをKOすることでPGC特異的遺伝子の発現誘導におけるDnmt3bの発現抑制及びTFAP2Cの発現誘導の機能解析を行う。2. PRDM14による「多能性獲得・維持」とBLIMP1による「多能性の潜在下」昨年度までに、EpiLCにPRDM14とBLIMP1を発現させ接着培養を行うことで、大量のPGCLCを誘導できることを突き止めた。この培養系を用いて、PRDM14単独、BLIMP1単独、PRDM14/BLIMP1共発現条件での遺伝子発現パターン及びゲノムへの結合をパターンを比較し、PRDM14とBLIMP1による多能性と生殖細胞誘導の関係性を明らかにする。3. PGCのエピゲノムリプログラミング原理に基づいた細胞初期化法の開発昨年度までに、pre-iPS細胞でG9aをノックアウトし、PRDM14を誘導できる系を構築している。今年度は、この細胞を用いて、PRDM14の誘導発現とG9aのノックアウトの組み合わせでiPS細胞への脱分化を誘導できるか否か検証する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Stem Cell Reports
巻: 7(6) ページ: 1072-1086
10.1016/j.stemcr.2016.10.007
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