PRDM14による多能性獲得におけるCTBP1/2の機能解析 多能性細胞・生殖細胞の成立維持に必須の転写因子PRDM14の複合体解析を行いCTBP1/2を同定した。PRDM14は転写調節因子であるCBFA2T2と1対1で直接結合しているが、CBFA2T2欠損ES細胞ではPRDM14とCTBP2の結合が解除されてこおり、CTBP2はCBFA2T2を介してPRDM14と結合していることを突き止めた。また、PRDM14による転写制御におけるCTBP1/2の機能解析を行うため、ゲノム編集によってCTBP1/2の2重欠損ES細胞を樹立した。この細胞を用いて、PRDM14の発現誘導を行い遺伝子発現変化を網羅的に解析したところ、PRDM14によって発現抑制を受ける半数以上の遺伝子で発現抑制が解除されることが明らかとなった。ES細胞を2種類のシグナル阻害剤(2i)で培養すると、Prdm14の発現上昇を伴い、基底状態多能性幹細胞へ移行することが知られている。この基底状態多能性幹細胞への移行におけるPRDM14-CTBP1/2複合体の機能解析を行うために、Ctbp1/2の2重欠損ES細胞の基底状態多能性幹細胞への移行を試みた。その結果、移行開始後、4日目から増殖速度が遅くなり、基底状態多能性幹細胞とは異なる性質の細胞へ変化した。この過程における遺伝子発現変化を解析したところ、2つの特徴が明らかとなった。一つ目は、基底状態多能性幹細胞のマーカー遺伝子の発現上昇が野生型と比較して2日間早いこと。もう一つは細胞増殖速度の低下に伴い、2細胞期胚特異的遺伝子が急激に上昇することが明らかとなった。これらの結果から、PRDM14とCTBP1/2の機能制御によってナイーブ型ヒトES細胞や全能性細胞の樹立に繋がる可能性が期待できる。
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