研究領域 | 生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御 |
研究課題/領域番号 |
16H01226
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
北島 智也 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, チームリーダー (00376641)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 卵母細胞 / 染色体分配 / チェックポイント |
研究実績の概要 |
成長した卵母細胞は巨大な細胞質を持つ。しかしながら、この巨大な細胞質サイズが卵母細胞の機能に果たす役割についての知見は限られている。本研究は、卵母細胞の巨大な細胞質サイズが果たす役割について、受精前の減数分裂と受精後のエピゲノム変化に着目して解析する。 平成28年度においては、特に受精前の減数分裂における染色体分配の正確性に着目した実験を遂行した。マウス卵母細胞を用い、顕微操作により細胞質を定量的に除去することで、半分の体積の細胞質を持つ卵母細胞を作出した。また、顕微操作により核を除去した卵母細胞と、もう一つの卵母細胞と融合させることで、二倍の体積の細胞質を持つ卵母細胞を作出した。 まず、紡錘体チェックポイント(SAC)の厳密性が細胞質サイズに依存するかを調べた。Sycp3ノックアウトマウスの卵母細胞では少数の一価染色体が見られ、これらはSACを活性化するものの、SACの厳密性が低いために染色体分配へと進行することが知られている。高解像度ライブイメージングを行うことにより、一価染色体の数と染色体分配への進行頻度の関連を調べたところ、半分の細胞質サイズを持つ卵母細胞では、より少ない一価染色体で染色体分配への進行が抑えられた。さらに、高解像度ライブイメージングとセントロメア抗体染色により染色体分配エラーの頻度を調べたところ、二倍の細胞質サイズを持つ卵母細胞では優位にエラー頻度が上昇していた。これらのことは、卵母細胞の巨大な細胞質サイズは、SACの厳密性を制限し、染色体分配の正確性を制限していることを示唆していた。 以上の結果から、卵母細胞の巨大な細胞質サイズは、受精前のイベントである減数分裂の染色体分配の正確性にネガティブな影響を及ぼしていると考えられた。平成29年度は、受精後のイベントであるエピゲノム変化に細胞質サイズが果たす役割を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成29年度に減数分裂における染色体分配の正確性を調べる予定であったが、計画が予想以上に進展したため、平成28年度中に染色体分配の正確性の解析を終えることができた。平成29年度には、計画通り受精後のエピゲノム変化における細胞質サイズの役割について調べる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、計画通り受精後のエピゲノム変化における細胞質サイズの役割について調べる。受精後のイベントとして①雄性前核のリモデリング、②雄性ゲノムの脱メチル化、③DNA複製を挙げ、まずライブイメージングを行うことにより、これらのイベントの進行が細胞質サイズに依存する可能性について検討する。ライブイメージングの系をすでに確立しており、これらの解析は計画通り進行することが期待できる。
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