公募研究
ピロリン酸(PPi)は核酸、タンパク質、多糖の生合成、脂肪の代謝の過程で生ずる代謝副産物であり、PPiを反応系から除去できなければ、これらの高分子合成は抑制される。一方、植物にはPPiを利用する酵素も存在し、PPi濃度の過度な低下も生育に負の影響を与える。細胞質PPiを無機リンに加水分解する酵素として、液胞膜H+輸送性ピロホスファターゼ(V-PPase)と可溶性ピロホスファターゼ(sPPase)が存在する。本研究は、これらの酵素がPPi濃度を適切に維持する機構を明らかにし、単純な無機化合物による形態形成制御という現象を深く理解することを目的とした。二重破壊株V-PPaseとsPPaseは、低張液で根端が破裂するが、根端でセルロース量が大幅に減少していることを組織染色により実証した。細胞壁成分の化学分析においてもグルカンの低下を検出した。V-PPase欠失株では培地窒素源にアンモニアが含まれない場合、本葉の萎縮という表現型が出現する。組織の萎縮はPPiの蓄積による細胞壁とクチクラ層の弱体化が原因と考えられる。また、アンモニアのほかに、アルギニンの培地添加も萎縮を顕著に抑制することを見出した。硝酸は地上部、アンモニアは根で主に同化されることから、硝酸限定条件では窒素代謝で生成するPPiが地上部に集中するため、V-PPase欠失株ではPPi加水分解能力を超えてしまうと推定した。V-PPase発現量の極端に低い根端コルメラ細胞において、V-PPaseを異所発現させるとデンプン量の減少が見られたが、逆に発現量の極端に高い蜜腺では、開花に伴いV-PPaseとsPPaseが増加すること、遺伝子破壊株において蜜成分の量が減少することを発見した。V-PPaseとsPPaseが組織毎にPPiレベルを調節することでそれぞれ最適な糖の流れを決定していると考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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